2025 年 91 巻 6 号 p. 205-217
本研究は,世界保健機関の2019年の生命表および死亡率データベースに基づき,モンゴルにおける死因別・年齢階級別の平均寿命の男女格差を明らかにすることを目的とする.その結果,モンゴルの平均寿命の男女格差(8.9歳)はアジアで最も大きく,かつ拡大傾向にあった.死因別の死亡率では,外傷・中毒(31.9%)の男女格差が最も大きく,次いで悪性腫瘍(18.1%),虚血性心疾患(17.1%),脳血管疾患(10.4%),その他の心疾患(4.9%)といったいわゆる非感染症の順であった.一方,長年モンゴルの主要な感染症であった結核による死亡率は低下し,疫学転換を経験していた.これらの死因のうち,アルコールによる中毒・曝露と肝臓がんは,とくに生産年齢人口において平均寿命の男女格差に最も大きく寄与しており,その根本原因は男性の過度の飲酒にある.モンゴル政府は,モンゴル男性の過度の飲酒による健康への悪影響を十分に認識しており,多くの研究,プロジェクト,キャンペーンを実施してきた.しかし,専門家の不足,モニタリング,評価,フォローアップの不足により,状況は改善されていない.公平性と公衆衛生の観点から,どの年齢階級,どの疾患を最優先にすべきか検討することが求められる.