2015 年 76 巻 6 号 p. 1387-1392
症例は43歳の男性.若年時に虫垂切除の既往あり.7日前からの右下腹部鈍痛を主訴に来院.腹部CTで上行結腸腸間膜に膿瘍形成が疑われたが,臨床症状・炎症所見に乏しいため,発症後24日目に待機的に腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると,上行結腸腸間膜に4cm径の硬い腫瘤を認め,回盲部から上行結腸と一塊となっていたため腹腔鏡下に右側結腸切除術を施行した.摘出標本で腸間膜内の炎症性腫瘤に向かって盲腸と回腸末端に開口部をもつ腸管様構造物を認め,病理組織学的に腸管重複症が化膿により穿通をきたして腸間膜膿瘍を形成したものと診断された.成人に発症する穿孔・穿通性腸管重複症は稀であり,今回腹腔鏡下手術で切除しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.