抄録
目的:都市郊外高齢者における健康三要因の3年間の経年変化とともに,その因果関係を共分散構造分析を用いて明確にすることを研究目的とした.
方法:都市郊外に居住する高齢者に対する郵送自記式質問紙調査である.13,195人(回収率80.2%)を基礎的データベースとした.3年後の2004年9月に同様の調査を実施した.追跡分析対象者は8,558名である.Finkelが示した交差遅れ効果モデルを共分散構造分析によって分析した.
結果:ADL(Activities of Daily Living)が全てが出来る割合は,三年後には87.6%から76.2%へと減少した.主観的健康感が「健康である」か「まあまあ健康である」割合は,80.8%から77.2%へと減少した.健康三要因の因果は,『精神要因』」(『』潜在変数)が基盤となり,その3年後の『身体要因』と『社会要因』を規定していた.モデル説明力が,男性後期高齢者で74%,女性後期高齢者で60%であり,適合度指数はNFI=0.964,IFI=0.968,RMSEA=0.017と,高い適合度が得られた.
結論:高齢者の身体的健康と社会的健康は,三年前の精神的健康が基盤となって規定される可能性が示唆された.研究成果を他の世代で明確にすると共に,外的妥当性を高めることが研究課題である.