日本健康教育学会誌
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18 巻, 2 号
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巻頭言
原著
  • 星 旦二, 中山 直子, 井上 直子, 高嶋 伸子, 坊迫 吉倫, 高橋 俊彦, 栗盛 須雅子, 櫻井 尚子, 長谷川 卓志, 藤原 佳典
    2010 年 18 巻 2 号 p. 103-114
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/12
    ジャーナル フリー
    目的:都市郊外高齢者における健康三要因の3年間の経年変化とともに,その因果関係を共分散構造分析を用いて明確にすることを研究目的とした.
    方法:都市郊外に居住する高齢者に対する郵送自記式質問紙調査である.13,195人(回収率80.2%)を基礎的データベースとした.3年後の2004年9月に同様の調査を実施した.追跡分析対象者は8,558名である.Finkelが示した交差遅れ効果モデルを共分散構造分析によって分析した.
    結果:ADL(Activities of Daily Living)が全てが出来る割合は,三年後には87.6%から76.2%へと減少した.主観的健康感が「健康である」か「まあまあ健康である」割合は,80.8%から77.2%へと減少した.健康三要因の因果は,『精神要因』」(『』潜在変数)が基盤となり,その3年後の『身体要因』と『社会要因』を規定していた.モデル説明力が,男性後期高齢者で74%,女性後期高齢者で60%であり,適合度指数はNFI=0.964,IFI=0.968,RMSEA=0.017と,高い適合度が得られた.
    結論:高齢者の身体的健康と社会的健康は,三年前の精神的健康が基盤となって規定される可能性が示唆された.研究成果を他の世代で明確にすると共に,外的妥当性を高めることが研究課題である.
  • 石井 香織, 岡 浩一朗, 井上 茂, 下光 輝一
    2010 年 18 巻 2 号 p. 115-125
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/12
    ジャーナル フリー
    目的 日本人成人を対象とし,健康増進のために推奨されている身体活動に関連する主観的評価による自宅近隣の環境要因を明らかにすることとした.
    方法 30-59歳の3,000名を対象にウェブ調査を実施した.身体活動と環境要因は日本語版国際標準化身体活動質問紙(IPAQ)及びIPAQ環境尺度により調査した.また,社会的要因(性,年齢,婚姻状況,就労状況,同居人数,教育歴,世帯収入)を自記式質問紙により調査した.男女別に,社会的要因を調整し,推奨される身体活動量を満たすことに関連する環境要因のオッズ比を算出した.従属変数は,(1)歩行,(2)歩行以外の中等度以上の身体活動,(3)中等度以上の身体活動((3)=(1)+(2))とし,それぞれ,週あたりの実施時間が150分未満と以上の2群に分類して分析した.
    結果 150分以上の歩行及び中等度以上の身体活動と有意な関連が認められた環境要因は,スーパーや商店へのアクセスが良いこと(男性:OR=1.44,女性:OR=1.73),バス停/駅へのアクセスが良いこと(OR=1.75,1.88),目的地が多いこと(OR=1.62,1.44)であった.また,景観が良いことは歩行以外の中等度以上の身体活動(OR=1.30,1.39)及び中等度以上の身体活動(OR=1.41,1.43)と関連していた.レクリエーション施設があることは,3つ全ての身体活動と関連していた.さらに,十字路/交差点があること(OR=1.32,1.44),自動車・オートバイを保有していること(OR=1.66,1.85)は歩行と,運動実施者を多く見かけること(OR=1.48,1.35)は歩行以外の中等度以上の身体活動と関連していた.
    結論 日本人成人において,運動実施に関する環境要因は,歩行以外の中等度以上の身体活動と関連し,生活活動における環境要因は,歩行及び中等度以上の身体活動と関連しており,自宅近隣の環境要因の種類は,異なった種類の身体活動と関連があることが明らかとなった.
  • 保健師の役割説明の構造化と特性パターン
    檀原 三七子, 守田 孝恵
    2010 年 18 巻 2 号 p. 81-91
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/12
    ジャーナル フリー
    目的:動機づけを目的に行う保健師から保健推進員への役割説明(以下,役割説明)の内容の構造化と保健師の特性パターンを明らかにすることを目的とした.
    方法:保健推進員活動を支援する保健師404名を対象に,無記名自記式調査を実施した.調査項目は,役割説明の内容,保健推進員の任期終了後の自主活動の有無,基本属性としては年齢,性別,職務,保健推進員活動の通算支援年数,社会活動経験の有無である.数量化III類を用いて役割説明の構造を明らかにし,保健師の属性,自主活動の有無との関連から保健師の特性パターンを導出した.
    結果:役割説明は,2つの軸で構成される空間構造で示すことができた.第1軸は,日常生活から政策の軸として捉え「政策―日常」軸と解釈できた.第2軸は,住民個人の健康づくりから地域の健康づくりの軸として捉え,「個人―地域」軸と解釈できた.また役割説明における保健師の特性は,地域貢献型,個人育成型,組織支援型,政策推進型の4つのパターンに類型化できた.保健推進員の任期終了後に自主活動へ発展させていた保健師の特性は,政策推進型と地域貢献型であった.保健師の専門職務遂行能力の発達と社会活動経験には関連が認められた.
    結論:役割説明は,「政策―日常」,「個人―地域」の2軸で構成される空間構造で示された.また,役割説明における保健師の特性として,地域貢献型,個人育成型,組織支援型,政策推進型の4つのパターンを特定できた.
  • 都市部公立小・中学校における検討
    武田 文, 岡田 加奈子, 朝倉 隆司
    2010 年 18 巻 2 号 p. 92-102
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/12
    ジャーナル フリー
    目的:養護教諭の抑うつレベルを明らかにするとともにストレッサー要因との関連について検討すること.
    方法:2004年9月ならびに2005年1月に関東地方1県内の3市で行われた公立小・中学校養護教諭研修会の参加者293名を対象に,属性,抑うつ(CES-D),職業ストレッサーに関する項目で構成された無記名自記式調査票を用いて調査を実施した.有効回答を得た184名について,CES-D得点から抑うつレベルを観察し,抑うつの有無と属性ならびに職業ストレッサーとの関連を検討した.
    結果:有効回答者のCES―D得点平均値は13.5点(SD8.0)で,得点16点以上の「抑うつあり」群は63名(34.2%)であった.ロジスティック回帰分析の結果,抑うつの有無に対して有意な関連が認められたのは「子供の有無」と職場での「役割葛藤」であった.抑うつ症状のオッズ比は,子供がいる者がいない者に対して2.4,役割葛藤の高い者が低い者に対して2.5であった.
    結論:都市部公立小・中学校の養護教諭において,抑うつ症状を呈するとみられる者は全体の34.2%あり,抑うつに関連するストレッサー要因として子どもの有無と職場での役割葛藤が認められた.
実践報告
  • 藤田 倶子, 上野 昌江
    2010 年 18 巻 2 号 p. 126-135
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/12
    ジャーナル フリー
    【目的】運動教室終了者を対象に教室終了後フォローアップ支援を実施し,運動継続に影響を与える支援を検討することを目的とした.
    【方法】対象は,40歳以上のメタボリックシンドローム該当者及び予備軍で,A市が実施した運動教室終了者16名である.運動教室終了後に電話・家庭訪問によるフォローアップ支援を3か月間行い支援前後に質問紙調査を実施した.3か月間運動を継続していた運動継続群(n=6)と調査時及び支援期間中に運動行動が中断していた非継続群(n=10)の2群にわけ,全体と2群の体重,BMI,運動自信感,運動ソーシャルサポート,予防的保健行動,身体活動量について分析した.統計手法として,フォローアップ支援前後を対応のあるt検定とwilcoxon 符合付き順位和検定,支援前と前後差についての群間比較をt検定とMann-WhitneyのU検定にて行った.
    【結果】支援前後では対象者16名のBMIは23.7(SD2.5)kg/m2から23.3(SD2.3)kg/m2に有意に減少した(p=0.029).支援後BMIがより減少する傾向が見られた運動継続群では,非継続群よりも支援前から運動自信感が高く運動ソーシャルサポートの得点が高い傾向がみられていた.また運動継続群だけでなく非継続群においても身体活動量は増加し,15.6(SD10.6)エクササイズであったのが,支援後には24.5(SD14.8)エクササイズとなった(p=0.013).
    【結論】健康教育終了後における体重計測や血液検査結果を用いた身体状態の説明や実践の聞き取りによる賞賛や励ましなどのフォローアップ支援は身体活動量の増加に影響を与えることが示唆された.
資料
  • 藤澤 雄太, 葦原 摩耶子, 満石 寿, 前場 康介, 竹中 晃二
    2010 年 18 巻 2 号 p. 136-147
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/12
    ジャーナル フリー
    目的:保健指導に関する原因帰属尺度を開発し,保健指導の成功・失敗原因に関する認識を明らかにすること.また,保健指導の成否に関する原因認識と保健指導の実施に対する自己効力感との関連を検討した.
    方法:保健師298名を対象に質問紙調査を実施し,保健指導が成功した原因,および失敗した原因について回答を求めた.因子分析により,両原因に関する帰属様式を検討した.また保健指導の実施に対する自己効力感とそれぞれの原因認識を構成する因子との相関を分析した.
    結果:因子分析の結果,成功原因は,「対象者中心の面接方略」,「面接能力」,「変動要因」の3因子12項目で構成され,3つの因子と自己効力感の相関が確認された.失敗原因は,「面接者要因」,「統制不可能な課題」,「対象者中心の面接方略不全」の3因子19項目により構成され,「面接者要因」と自己効力感の間に負の相関が示された.
    結論:保健指導の成否に関する原因帰属様式が明らかになり,帰属様式と保健指導の実施に対する自己効力感との関連が示された.
  • 赤松 利恵, 松丸 礼
    2010 年 18 巻 2 号 p. 149-160
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/12
    ジャーナル フリー
    目的:「食に対する不合理な信念」尺度 (the Irrational Eating Beliefs Scale:IEBS) が生活習慣病のリスクのある者において適用する尺度として妥当であるかを検討するため,生活習慣病のリスクのある者を対象に,IEBSの信頼性と妥当性を検討した.
    方法:2007年4月~8月に都内の医療機関において,健診あるいは受診した者に無記名の自記式質問紙調査を行った.調査内容は,IEBS,健康や病気の原因帰属を測るMultidimensional Health Locus of Control(MHLC),行動変容の準備性である重要性と自信,生活習慣,属性であった.本研究では,メタボリックシンドローム診断基準の腹囲の基準値に該当する者,あるいは生活習慣病を罹患状況において,1つ以上について要注意または診断と回答した者をリスク有群とし,リスク有無別に信頼性と妥当性の検討を行った.
    結果:378人の回答のうち,腹囲および生活習慣病の罹患状況が記入漏れだった79名をのぞき,299人(有効回答率79.1%)を本研究の解析対象者とした(リスク有群=167人,リスク無群=132人).リスク有群においても,各下位尺度の信頼性は,ほぼ確認できた(クロンバックα=0.60~0.83).MHLCとの関連では,リスク有群では各下位尺度とCHLCとの間で,弱い正の相関がみられた(rs =0.23~0.25,p ⟨0.01).行動変容の準備性との関係でも,リスク有群は,「食生活変容回避」と重要性との間(rs =−0.35,p ⟨0.01),また「食生活変容の障害」と自信との間で,弱い負の相関がみられた(rs =−0.25,p ⟨0.01).リスク無群も同様の結果であった.生活習慣との関係では,リスク有群は「食生活変容回避」と「食生活変容の障害」において,リスク無群は「食生活変容の障害」において,望ましくない生活習慣と関連性がみられた.
    結論:IEBSの「やせることへのネガティブな考え」は,リスク有群においても,MHLCとの検討でのみ関連がみられ,不合理な信念としての妥当性は断定できない結果であった.しかし「食生活変容回避」と「食生活変容の障害」については,MHLC,行動変容の準備性,生活習慣との関連性が示され,食に関する不合理な信念としての妥当性が確認できた.
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