日本健康教育学会誌
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原著
地方都市の在宅高齢者における健康3要因の経年変化とその因果構造
高嶋 伸子高城 智圭星 旦二
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2012 年 20 巻 1 号 p. 19-29

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抄録

目的:地方都市に在住する高齢者を対象に,10年間の健康3要因(身体的・精神的・社会的要因)の経年変化やその因果構造を明らかにすることを研究目的とする.
方法:A市B地区在住60歳以上全員3,717人を対象に1999年3月に郵送で自記式質問紙調査を実施し,回答の得られた2,520人(回収率67.8%)を基礎的データベースとした.10年後の2009年7月に死亡や転居を除いた1,796人に追跡調査を行い,回収された1,081人(回収率60.2%)から回答不備を除いた1,070人(1,070/1,796=59.6%)を分析対象とした.健康3要因について健康づくり実践との関連や10年間の経年変化,さらに健康3要因と健康づくりの実践をあらわす健康志向行動の因果構造を共分散構造分析により分析した.
結果:健康3要因の10年の変化は身体的要因や精神的要因は統計学的に有意な低下がみられたが社会的要因は維持または望ましい方向への変化が示された.さらに“1999年精神的健康”(“ ”は潜在変数を示す)を基盤とし10年後の“2009年身体的健康” を経由して健康志向行動を含む“2009社会的健康”を内生潜在変数とする因果構造が示され,NFI=0.977,CFI=0.990,TLI=0.981,RMSEA=0.027と高い適合度が得られた.
結論:高齢者の社会的健康や健康志向行動は10年前の精神的健康が基盤となって規定されることが示され,住民の健康づくりを支援する保健師の役割としては,精神的健康を基盤とした支援を重視する意義が示唆された.

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© 2012 日本健康教育学会
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