日本健康教育学会誌
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20 巻, 1 号
日本健康教育学会誌
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巻頭言
総説
  • 澤田 樹美, 石原 孝子, 今井 具子, 吉野 佳織
    2012 年 20 巻 1 号 p. 3-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    目的:職域を対象にした栄養・健康教育による野菜摂取増加をシステマティックレビューし,介入プログラム内容や行動科学理論を明らかにすること.
    方法:データベースは,国内文献は医中誌とJdream II,海外文献はPubMedを使用した.オンライン検索は2010年1月までに出版された論文を対象とし,検索式は“野菜”,“職域”,“介入”を示すキーワードを組み合わせた.採択基準は1)無作為臨床試験(RCT)もしくは対照群をおく研究(CT),2)栄養・健康教育の領域,3)野菜摂取増減の検証,4)対象集団が勤労者,5)英語または日本語の記載とした.キーワード検索により,海外文献は134件を採択した.タイトルと抄録より82件の論文を除外し,フルテキストの精読により21件を抽出した.野菜摂取増加のアウトカムを評価するために評価指標を設けた.
    結果:野菜摂取増加の評価をした結果10件が採択され,介入により野菜摂取の増加が認められたのは5件(増加量は0.18- 0.77SV,及び0.18cup)であった.5件の介入プログラムでは,情報提供だけでなく食堂改善や周囲の支援などを実施した環境プログラムと,ITを使用した教育プログラムであった.全てに行動科学理論が用いられており,4件にトランスセオレティカルモデルが使用されていた.
    結論:野菜摂取が増加した介入研究は少なく,今後は効果的な介入プログラムの開発が必要である.また職域での栄養・健康教育を実施する際には,知識等の情報提供のみではなく,環境支援やITの使用も積極的に取り入れ,行動科学理論を適用することが望ましい.
原著
  • 高嶋 伸子, 高城 智圭, 星 旦二
    2012 年 20 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    目的:地方都市に在住する高齢者を対象に,10年間の健康3要因(身体的・精神的・社会的要因)の経年変化やその因果構造を明らかにすることを研究目的とする.
    方法:A市B地区在住60歳以上全員3,717人を対象に1999年3月に郵送で自記式質問紙調査を実施し,回答の得られた2,520人(回収率67.8%)を基礎的データベースとした.10年後の2009年7月に死亡や転居を除いた1,796人に追跡調査を行い,回収された1,081人(回収率60.2%)から回答不備を除いた1,070人(1,070/1,796=59.6%)を分析対象とした.健康3要因について健康づくり実践との関連や10年間の経年変化,さらに健康3要因と健康づくりの実践をあらわす健康志向行動の因果構造を共分散構造分析により分析した.
    結果:健康3要因の10年の変化は身体的要因や精神的要因は統計学的に有意な低下がみられたが社会的要因は維持または望ましい方向への変化が示された.さらに“1999年精神的健康”(“ ”は潜在変数を示す)を基盤とし10年後の“2009年身体的健康” を経由して健康志向行動を含む“2009社会的健康”を内生潜在変数とする因果構造が示され,NFI=0.977,CFI=0.990,TLI=0.981,RMSEA=0.027と高い適合度が得られた.
    結論:高齢者の社会的健康や健康志向行動は10年前の精神的健康が基盤となって規定されることが示され,住民の健康づくりを支援する保健師の役割としては,精神的健康を基盤とした支援を重視する意義が示唆された.
  • インターネット調査による検討
    高泉 佳苗, 原田 和弘, 柴田 愛, 中村 好男
    2012 年 20 巻 1 号 p. 30-40
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    目的:健康的な食生活リテラシー(Healthy Eating Literacy:HEL) 尺度の信頼性および妥当性を検討することを目的とした.
    方法:2010年12月,社会調査会社の20-59歳の登録モニター6,045名を対象に,インターネットを用いた横断研究を実施した.HEL尺度の構成概念妥当性は,検証的因子分析と基準関連妥当性から確認した.基準関連妥当性は行動変容ステージとの関連を検討した.尺度の信頼性は,内的整合性と再検査信頼性によって検討した.内的整合性はCronbachのα係数を算出し,再検査信頼性は2週間後の尺度との比較を行った(n=100).
    結果:有効回答数は1,252名であった(回答率20.7%).検証的因子分析の結果,高い適合度指標が得られた(GFI=0.988,AGFI=0.957,CFI=0.990,RMSEA=0.080).また,共分散分析の結果,HEL尺度と行動変容ステージに関連性が示された(F=16.25,p<0.001).内的整合性(α=0.87)と再検査信頼性(r=0.742,p<0.001)は良好であった.
    結論:HEL尺度の信頼性および妥当性が確認され,本尺度が一般成人のHELの評価に,使用できる可能性が高いことが示された.
  • 新保 みさ, 赤松 利恵, 玉浦 有紀, 武見 ゆかり
    2012 年 20 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    目的:体重管理の変容ステージの無関心期に含まれるセルフエフィカシー(以下SEとする)の高い者の特徴を他の変容ステージと比較することを目的とした.
    方法:2008年7月,I健康保険組合員994名を対象に,体重管理の変容ステージ,SE,生活習慣,現体重の認識,属性について質問紙調査による横断研究を行った.無関心期をSEの中央値で2つに分け,SE得点,生活習慣,属性についてKruskal-Wallis検定またはx2検定を用いて変容ステージを比較した.また,SEの高い無関心期の者を基準にBonferroniの補正による多重比較を行った.
    結果:SEの高い無関心期の男性は,他の変容ステージよりもBMIが低かった(全てp<0.010).また,間食をしない男性の割合は,SEの低い無関心期や関心期の男性よりも(各々p=0.003)SEの高い無関心期の男性において高く,就寝前2時間以内の食事をしない男性の割合は,関心期の男性よりもが高かった(p=0.009).SEの高い無関心期の女性のBMIは準備期の者よりも低かった(p=0.002).
    結論:SEの高い無関心期の者は,トランスセオレティカルモデルで定義されている無関心期の者とは異なっており,SEの高い無関心期の男性は,BMIが低く,体重管理のための食習慣を実践していた.
実践報告
  • プログラムを用いた無作為介入試験
    海老原 泰代, 三浦 秀史, 高橋 裕子, 山川 正信
    2012 年 20 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    目的:就労世代に対する,電子メールと携帯電話を利用した健康教育プログラムを開発し,体重・腹囲および血液検査値におよぼす効果について検証した.
    方法:この無作為介入試験は,腹囲基準(男性85cm,女性90cm)を超過していた者またはBMI25以上の39名(男性22名,女性17名)を対象とした.対象者を性別・年齢階級で層化後,無作為に介入群と対照群の2群にわけた.介入群には,3ヶ月間,1日2回,食事と運動に関する情報提供を電子メールで行う減量支援プログラムを提供した.介入群は支援期間中に3日間の食事の写真を電子メールに添付して送信し,管理栄養士による個別食事支援を受けた.対照群は開始時に管理栄養士による面談を受けた.群間の変化量の差はMann-Whitney検定を行い,有意水準は5%とした.評価項目は,体重,腹囲,血圧,中性脂肪(TG),HDLコレステロール(HDL),LDLコレステロール(LDL),空腹時血糖(FBS)およびヘモグロビンA1c(HbA1c)と栄養素等摂取量とした.
    結果:介入群では男女ともに食事支援により,摂取エネルギー量を減らすことができた.介入群の平均体重は男性3.4kg,女性0.3kg減少した.介入群女性の空腹時血糖のみ3ヶ月後に有意な減少がみられた(p<0.05).
    結論:このプログラムは平均摂取エネルギー量を減少させることにより,体重および女性の空腹時血糖に一定の改善効果を示した.
資料
  • 上地 広昭, 竹中 晃二
    2012 年 20 巻 1 号 p. 60-70
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/10
    ジャーナル フリー
    目的:本稿では,現在,健康教育の分野で注目を集めているソーシャル・マーケティングに関する最新の知見をまとめ,ソーシャル・マーケティングを適切に活用するための方法について論じることを目的とした.
    方法:主に,英国ソーシャル・マーケティング・センター,米国疾病予防管理センター,およびウェインレイチ・コミュニケーションズの資料を参考にまとめた.
    結果:英国ソーシャル・マーケティング・センターによれば,ソーシャル・マーケティングの基準として「顧客志向」,「行動」,「理論」,「洞察」,「交換」,「競争」,「セグメンテーション」,および「メソッド・ミックス」の8つの要素を満たすことが求められており,これらの要素を活用しながら,「事前調査」,「戦略」,「プログラム開発」,「実行」,および「評価」の手順でプログラムを進めることが有効であろう.
    結論:1990年代以降,インターネットなどの情報技術の急速な発達により,ソーシャル・マーケティングを応用した研究を行うにあたって以前ほど大規模な予算を必要としなくなった.そのため,今後ますます,ソーシャル・マーケティング研究の増加が予想されるが,プログラム作成の際は,本稿で紹介したソーシャル・マーケティングの基準および手順を参照することが役立つ.
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