抄録
背景:歯の喪失は咀嚼機能と直結する.現状では年齢が高いほど歯の喪失が進んでおり,咀嚼機能に支障を来す人が多い.しかし,歯の喪失は加齢現象ではなく予防が可能である.
内容:成人期以降のライフステージでは,歯の喪失による咀嚼機能低下が食品・栄養素摂取に影響を与えることが近年の研究から明らかになってきた.健常者については国内外の大規模調査より歯の喪失が適切な食品・栄養素摂取の阻害要因になることを示唆する横断分析結果が得られている.これらの調査結果から,歯の喪失が進んで口腔状態の悪い人たちは,硬い食品の咀嚼に支障を来し,これらの摂取を避けて炭水化物の豊富な食品を摂取し,栄養摂取バランスの崩れを来す,という流れが示唆される.虚弱高齢者では,口腔状態の悪化が低栄養のリスクなることが明らかになっている.また,低栄養のリスクは,口腔機能を高める介入により改善できることを示唆する研究結果も得られている.
結論:口腔保健と栄養の関係者は,今後一層の連携・協働が必要である.成人期では,口腔状態の悪化が栄養摂取バランスの崩れを来し,各種疾患の発症リスクを高めるという考え方を基本にすべきと考える.高齢期においては「食べること」の支援を役割分担するという考え方が重要である.これらの連携・協働を図っていくためには,口腔保健と栄養の双方の関係者が共に利用できる評価指標を確立していくことが必要と思われる.