日本健康教育学会誌
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実践報告
高校生へのヘルスリテラシー向上の取組報告
―家族や市民への波及効果と今後の課題―
笠原 美香吉池 信男
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2018 年 26 巻 3 号 p. 248-260

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抄録

目的:次世代を担う高校生が,地域社会の健康課題解決に向けた健康づくりアイデアを考え,発信するプロセスの中で自らのヘルスリテラシーを高め,その波及効果により家庭や地域社会全体のヘルスリテラシー向上を図ることを目的に,青森県五所川原市で事業を実施(2014~2016年度)・評価した.

事業内容:自分たちの考えた健康づくりアイデアを地域社会に発表する場として,「ミニミニ保健師アイデアコンテスト」を実施した.健康づくりのアイデア作成に向け,食事・運動・休養の視点を盛り込んだ「ワークショップ」,ミニミニ保健師スタンプラリー(学生健診含む),バスツアー(食の探検,運動探検ツアー)の3つのサブ事業を実施した.

事業評価:事業終了後,参加高校生とその保護者,コンテスト投票者に無記名自記式質問紙調査を行った.事業参加後,健康についての考えや行動に関し,6割以上の生徒に変化がみられた.3割以上の保護者が,子どもの生活習慣の変化に気づき,知り得た健康情報を他者に伝達していた.2016年の事業終了後,市民団体が市民提案型事業に健康づくり支援の企画を申請し,生徒が「認知症ミニカフェ」を提案するなど,さらなる展開があった.

今後の課題:地域社会への成果が目に見えるまでには長いスパンが必要であり,事業継続には学校保健と地域保健の連携が不可欠である.そのためには,各分野の所管省庁の垣根を越えたシステム整備が必要であろう.

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