日本健康教育学会誌
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特集:初等・中等教育におけるヘルスリテラシー教育の取り組み
学校で学んで欲しい自分らしく生きるためのヘルスリテラシー—情報評価と意思決定のスキル「かちもない」と「おちたか」—
中山 和弘
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2024 年 32 巻 3 号 p. 212-219

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抄録

ヘルスリテラシーは,健康のために必要な情報を「入手」「理解」「評価」して適切に「意思決定」するという4つの力である.そもそもリテラシーとは,基本的な人権すなわち自分らしく生きる権利であり,ヘルスリテラシーでも同様であることを忘れてはならない.日本人は,欧州やアジアと比べて,「評価」「意思決定」が難しい傾向であり,学校教育の段階から建設的に議論して意思決定する習慣を学ぶことを重視してきている国のように,これらのスキルの向上が課題である.

日本の高校生においては,情報の信頼性の評価ができるほど,また意思決定が熟慮型すなわち合理的であるほど,より望ましい健康行動をとりやすいという調査結果がある.情報評価のスキルで,5つのポイント「か・ち・も・な・い」の確認によってエビデンスとナラティブを見極める力と,合理的な意思決定のスキルで,そのプロセスの構成要素である選択肢(オプション)・長所・短所・価値観を表す「お・ち・た・か」で決める力が必要である.人生の選択を始めつつある児童生徒において,自分の価値観を明らかにしながら自分らしい意思決定ができるようになるためにも,これらのスキルを身に付ける機会に恵まれて欲しい.

2つのスキルの普及のための動画を作成したので,活用していただけたら幸いである.実際に学校においてどのように導入すれば効果が得られるかの評価研究が進むことを期待したい.

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