日本健康医学会雑誌
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子どもの「生と死」に対する認識
杉本 陽子
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2001 年 10 巻 1 号 p. 2-11

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抄録

幼児期から思春期にある子どもが,生きること,死ぬこと,生命についてどのように認識しているのか,その発達的変化を明らかにするために,3歳〜15歳の子ども89名を対象に「生と死」に関する10項目について,聞き取り調査を実施した。結果は以下のようであった。1.第II年齢段階(6〜8歳)で死の概念の4構成成分「死の普遍性」「体の機能の停止」「死の非可逆性」「死の原因」すべてに60%以上の回答があり,死の概念の理解がほば獲得されるのはこの年代であった。2.死別体験のある子どもは第II年齢段階で50%となり,第III・第IV年齢段階(9〜11歳,12〜15歳)で80%を越えた。3.第IV年齢段階の女子3名が祖父母との死別体験から「生と死」についての深い思索をしたことを語り,自分の生きる意味や生き方を考えるきっかけとしていた。4.第III・第IV年齢段階の子どもは,「体の機能の停止」「死の非可逆性」「死後観」の回答の中で,死後の世界や魂といった霊的・精神的回答と「生まれ変わり思想」を特徴とした。特に第IV年齢段階で「生まれ変わり思想」が顕著であった。5.「生きている実感」は,うれしいとき,楽しいときといった「幸福感」と「生きていることの事実」を感じたときであった。6.「死の衝動」は第II年齢段階からみられ,理由は「人間関係に関すること」で,16名中12名が女子であった。

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