近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 25
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片脚立位での一側下肢の運動が対側の支持脚における足底圧中心位置と足部周囲筋群の筋活動に与える影響
-健常群と足部不安定性群との比較-
*山口 剛司高崎 恭輔鈴木 俊明
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抄録
【はじめに】 我々は、先行研究で足部不安定性に対する運動療法は、閉鎖性運動連鎖でのエクササイズも重要であり、その時は足部周囲筋群の筋活動を把握する必要性があることを報告した。具体的には、足部不安定性の認められない健常群を対象とした片脚立位での一側下肢の運動課題時に、支持脚の足部内に起こるCOP変化と足部周囲筋群、膝屈筋群の筋活動に着目した。この結果は、運動課題に伴うCOP移動は一定の傾向を認め、COP移動方向と足部周囲筋群の筋活動にも傾向が認められた。そこで足部不安定性を有する群に対してエクササイズを実施する際には、健常群との間で筋活動の相違点があるかを把握する必要があると考えられた。このことから今回は、足部不安定性を有する群に同運動課題を実施し健常群と比較した結果、若干の知見を得たので報告する。 【対象と方法】 対象は本研究に同意を得た健常群男女7名の支持脚7肢と、足部に不安定性を認める3名(以下、不安定性群)の支持脚3肢とした。不安定性群は、足関節内反・外反ストレステストが陽性で、川野による振り向きテストにおいて回外不安定性が認められる群とした。方法は、被験者に重心計のプレート上で支持脚の片脚立位をとらせ、筋電図を測定した。筋電図は支持脚の腓骨筋、後脛骨筋、前脛骨筋、足趾伸筋、半膜様筋、大腿二頭筋を記録した。運動課題は、立位の状態から非利き足側下肢の足底が接地しないよう前方で空間保持した状態を開始肢位とし、この肢位から運動側股関節を内転する運動(内側運動)、外転する運動(外側運動)を行わせた。なお下肢の運動と筋電図波形、COP記録を同期するためにフットスイッチを運動側の母趾と小趾に配置し、これが作動するように被験者の前方に台を二つ設置した。運動課題は開始肢位より内側運動から行い、外側・内側の3回の接触で1施行とし3施行測定した。 分析方法は、運動課題中のCOP軌跡の時間的変化とそれに伴う導出筋の筋活動パターンを分析し伸展位のデータと比較した。 【結果および考察】 運動課題時のCOPは、健常群・不安定性群ともに内側運動課題中は小趾側方向へ移動し、外側運動課題中は母趾側方向へ移動した。一方筋活動パターンは、両群で次のような違いを認めた。まず健常群では、COP移動方向により腓骨筋と後脛骨筋の筋活動が明確に切り換る場合やCOP移動方向に関わらず後脛骨筋が持続的に活動する場合が見られた。また膝屈筋群は、一定の傾向は見られなかった。次に不安定群では腓骨筋と後脛骨筋の筋活動の明確な切り替えは見られず、後脛骨筋と半膜様筋の持続的な筋活動が見られた。 まず不安定性群の後脛骨筋は、足部内側の剛性を形成し足部安定化作用を担うと言われており、運動課題時のCOP移動時の足部不安定性を補償する目的で持続的に活動すると考えられる。次に半膜様筋は、膝関節の動的制御と安定化に大きく関与するため、運動課題時の足部不安定性から生じる膝動揺性を予め制動する目的で持続的に活動したことが考えられた。
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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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