近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
セッションID: 34
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走動作における股関節、骨盤・腰椎運動の検討
*治郎丸 卓三伊藤 章
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キーワード: 走動作, 股関節, 骨盤
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抄録

【目的】走動作において低速度から最高速度に至る走行において考慮すべき体幹、骨盤での関節運動についての基礎的知見は得られていない。そこで今回、走動作の接地期に着目し、走行速度変化に対する骨盤、体幹運動の分析を行ったところ、股関節回旋運動、骨盤・腰椎屈曲伸展運動において若干の知見が得られたので報告する。 【方法】大学陸上競技部の男子短距離選手6名、年齢20.3±2.0歳、100M自己記録11.39±0.48秒を対象とした。速度条件は、2.5、4.5、6.5m/s、および最高速度の4条件とした。全試技を4台のハイスピードカメラ(Vision Research社製)を用いて撮影し、ビデオ動作解析システム(DKH社製)により角度変化を算出した。股関節回旋角度は両上後腸骨棘を結んだ線に対する大腿骨内側上顆、外側上顆を結んだ線とのなす角度。骨盤・腰椎屈曲伸展角度は上後腸骨棘、大転子を結んだ線に対する第1、第3腰椎を結んだ線とのなす角度とした。検討の対象は左接地期のみとした。検討項目は、(1)全接地期における経時的な関節運動方向の検討(2)接地初期に起こる股関節内旋運動、骨盤・腰椎屈曲運動の角変位、その後の股関節外旋運動、骨盤・腰椎伸展運動の角変位を各速度間で比較し、統計学的処理にはSteel-Dwassの方法を用い危険率5%未満をもって有意とした。 【結果】(1)股関節回旋運動方向は、走行速度2.5、4.5、6.5m/sでは接地初期に内旋運動が起こり、その後、外旋運動が起こる。最高速度では接地初期の内旋運動がほとんど起こらず、外旋運動が起こっていた。骨盤・腰椎屈曲伸展運動方向は、走行速度2.5、4.5m/sでは接地初期に屈曲運動が起こり、その後、伸展運動が起こる。6.5m/sから接地初期の屈曲運動は減少し始め、最高速度ではまったく起こることなく、初期から伸展運動が起こっていた。(2)接地初期の内旋角変位は、最高速度において2.5m/s、4.5m/sよりも有意に減少が認められた。接地初期の骨盤・腰椎屈曲角変位は、6.5m/sでは2.5m/sよりも有意に減少が認められ、最高速度においては2.5m/s、4.5m/sよりも有意に減少が認められた。その後の股関節外旋角変位、骨盤・腰椎伸展角変位では各速度間で有意な差が認められなかった。 【考察】今回の結果より、最高速度に近い速度で接地初期の股関節内旋運動、骨盤・腰椎屈曲運動が減少し始めるのは、短時間に大きな減速の力を受け止め、瞬時に大きな加速の力を発揮するために骨盤・体幹部の固定が必要になるためであると考えられる。この際、股関節外旋、腰椎前彎、骨盤前傾作用により骨盤・体幹部の固定が行われていると考えられる。これら全てに作用する筋として腸腰筋があげられるが、久野らは、大腰筋横断面積と疾走速度との関係について大腰筋が大きいほど疾走速度が速くなると示した。このことから、走行速度を高めるためには接地初期の腸腰筋作用が重要であることが示唆された。

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© 2009 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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