近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 52
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正常歩行と揃い型歩行の大脳皮質活動の違い
-fNIRS研究-
*植田 耕造信迫 悟志藤田 浩之森岡 周
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キーワード: 歩行, 運動前野, fNIRS
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抄録
【目的】歩行は脊髄から大脳皮質までの中枢神経系による複雑な神経ネットワークによって制御されていると考えられている.近年,脳機能イメージング装置によりヒトの歩行運動中,歩行運動イメージ中の脳活動が調べられている(Miyai 2001,Fougere 2010)が,正常歩行以外の歩行様式中の脳活動を報告したものは少ない.揃い型歩行は,正常歩行から歩行リズムやパターンを変化させる必要があるため,より大脳皮質の関与が必要であると考えられる.正常歩行時と揃い型歩行時の脳活動の違いを明らかにすることが本研究の目的である.【方法】健常者7名(男性5名,女性2名,平均年齢23.1±2.1)を対象とし,2条件の歩行動作を行ってもらい,その際の脳活動を機能的近赤外分光イメージング(fNIRS,FOIRE-3000,Shimadzu)にて計測した.歩行課題は,30mの正常歩行,15mの揃い型歩行の2条件を,各3回ずつ,正常歩行,揃い型歩行の順序で,それぞれ任意速度にて行った.揃い型歩行は,3名は右足から,4名は左足から振り出した.揃い型歩行の説明は,実験者が動作を行い,被験者に観察してもらう形で実施した.なお今回は,足を厳密に揃えるような指示はしていない.30mの歩行路の中央にシート式足圧接地足跡計測装置(ANIMA)を設置し,歩行速度を測定した.被験者の踵に取り付けた荷重スイッチシステム(DKH)をNIRSと同期させ,踵接地のタイミングをNIRS上に取り込んだ.計測は,安静20秒後に各歩行課題を行った.歩行開始5秒前からカウントダウンを行い,歩行開始の合図とした.NIRSは,横5×縦6でファイバーを配列し,左右前頭から頭頂を含む49チャンネルで測定した.測定項目は酸素化ヘモグロビン濃度長(oxy-Hb)とした.解析に用いる時間帯は,各歩行課題安静時の7秒から12秒中の5秒間,各歩行課題時の1から5歩間,5から10歩間とした.なお,1から5歩間,5から10歩間のデータ抽出時は,それぞれ1歩目,5歩目の踵接地のタイミングから4秒遅らせ,そこから5歩分の時間帯のデータを抽出した.1から5歩間,5から10歩間の2つの時間帯において,チャンネルごとにeffect sizeを算出し,左右感覚運動野(SMC),補足運動野(SMA),左右運動前野(PMC),左右頭頂領域(PC)におけるROI(region of interest)解析を実施した.その後,Wilcoxon符号順位和検定を用いて,歩行課題間の統計分析を2つの時間帯においてそれぞれ実施した.【説明と同意】全ての被験者に対して,研究内容を紙面および口頭にて説明し,同意を得た.なお本研究は本学研究倫理委員会にて承認されている.【結果】正常歩行に比べて揃い型歩行は,1から5歩間の時間帯において,左PMCで有意なoxy-Hbの増加を示し(P<0.05),他の全ての領域でもoxy-Hbの増加傾向を示した.また,5から10歩間の時間帯において,SMA以外の左右PMC,左右SMC,左右PCで有意なoxy-Hbの増加を示し(P<0.05),SMAでも増加傾向を示した.歩行速度は,正常歩行4.42±0.59km/h,揃い型歩行3.58±0.83km/hであった.【考察】正常歩行は左右下肢を交互に周期的に運動させるが,揃い型歩行はそのリズムやパターンを変化させる必要がある.このため,1から5歩間,5から10歩間において全ての領域でoxy-Hbの増加傾向を示したことは,歩行パターンやリズムを変化させるために大脳皮質の働きが必要であることを示唆している.その中でも,1から5歩間,5から10歩間ともに有意差がみられた左PMCが 特に関与すると考えられる.トレッドミル上歩行の加速期においてPMCの活動が増加すること(Suzuki 2004)や,歩行停止の運動イメージで右PMCの活動が増加すること(Wang 2009)からも,歩行の調節にはPMCが関与することが考えられる.
各領域の活動増加の別の可能性としては,揃い型歩行は両下肢を揃える必要があり,今回は正確に揃えるような指示はしていないが,それでも正常歩行よりは精密な下肢の制御が必要になることが考えられ,この精密な下肢の制御のため各領域の活動が増加したことが考えられる.精密な下肢の制御が必要となる歩行イメージ課題で左右上頭頂小葉や背側運動前野の活動がみられることから(Bakker 2008),1から5歩間での左PMC,5から10歩間での左右PMC,PCの活動の増加は,正常歩行に比べ精密な下肢の制御が必要になったことによるものとも考えられる.
本研究で,正常歩行時と揃い型歩行時の大脳皮質活動が異なることが明らかになった.今後は,各領域の活動増加が,歩行リズムやパターンの変化,精密な下肢の制御のどちらと関係するのかを明確にしていく必要があると考える.【理学療法研究としての意義】正常歩行と異なる歩行様式では,大脳皮質の活動が変化する可能性を示した.これは歩行のメカニズム解明において重要な知見であると考える.
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© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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