抄録
【目的】アメリカンフットボールの現場でもスローイング動作の反復による肩関節周辺の障害はしばしば見られる。今回、ドロップバック後のスローイング動作を撮影し、肩・体幹の動きを観察することで、障害の原因を探ることを目的とする。
【方法】対象は大学アメリカンフットボール部に所属するクォーターバック(以下QB)、A:23歳、B:23歳、C:19歳である。ドロップバック後に正面と左右斜め45°前方15ヤード先のターゲットにスローイングし、モーションキャプチャシステムとハイスピードカメラで撮影し解析した。【説明と同意】データの使用には予め対象者の同意を得た。
【結果】正面へのスローイングをST、腹側斜めをFT、背側斜めをBTとする。肩水平内転角度は、Aは非投球側足底接地(以下FP)時ST:19.53、FT:17.26、BT:14.18、ボールリリース(以下BR)時ST:33.76、FT:30.60、BT:32.23であった。BはFP時ST:31.53、FT:26.86、BT:33.93、BR時ST:36.20、FT:26.36、BT:34.60、CはFP時ST:-9.20、FT:-8.22、BT:-6.91、BR時ST:23.02、FT:15.41、BT:20.04であった。体幹はFP時に投球側へA はST:25.30、FT:45.10、BT:26.24、BはST:15.16、FT:23.40、BT:10.84、CはST:20.62、FT:31.62、BT:25.61、BR時に非投球側へA はST:32.60、FT:30.51、BT:34.43、BはST:19.05、FT:14.26、BT:14.56、CはST:30.70、FT:25.51、BT:29.69回旋していた。(単位:°)
【考察】3人に共通して、ST、BTではFP時の体幹回旋角度が、FTに比べ小さく、いわゆる体の開きが早い傾向にあったが、BR時には大きな差はなかった。水平内転角度もスローイング方向による大きな差はなかった。よって、スローイング方向によりFP時に体が多少開いていても、テイクバックを小さくし、BRをより前方で行うことで、肩への負担を大きくしないようにスローイングしているのではないかと推測できる。
【理学療法研究としての意義】アメリカンフットボールのスローイング動作に関する報告は競技人口に比例して野球投手のそれと比べ非常に少ない。しかし、ボールの重さやチーム状況によるスローイング数の増加によって、肩関節の障害の発生は容易に予想できる。今後は症例数を増やし、下肢からの運動連鎖や肘・前腕の使い方についても観察していき、障害の原因を探っていきたい。