近畿理学療法学術大会
第51回近畿理学療法学術大会
セッションID: 93
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当院における吸引実施に向けての取組みと改善点
-アンケート調査を通じて-
*七津角 未有勝山 美幸芦野 尊文西田 憲司片岡 紳一郎
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抄録
【目的】
 去る2010年4月30日、厚生労働省医政局通知(医政発0430第1号)により、理学療法士(以下PT)・作業療法士(以下OT)による喀痰等の吸引行為が制度上認可された。そこで当院においてもPT・OTの吸引実施に向け、医師・看護師による指導協力の下、研修会及び実技講習会を企画・実施した。その後、知識・技術の不足点等を把握・整理する為、アンケート調査を行った。そこから抽出された課題に基づき、改善計画を策定・実施したので、若干の考察を踏まえて報告する。
【方法】
 2010年6月より、医師・看護師による院内研修会を週1回、計7週実施した。具体的な研修内容は、日本呼吸療法医学会による「気管吸引ガイドライン」を基に、口腔・鼻腔・呼吸器の解剖生理、呼吸器疾患の病態生理、呼吸理学療法、緊急時の対応(CPR)、気管切開・挿管について、人工呼吸器と機器の取り扱いについて、標準予防策と吸引操作について、の7項目とした。また、吸引技術の習得においては、自ら体験することが重要と考え、双方同意の上、互いに口腔・鼻腔吸引を実施した。次に看護師指導の下、担当患者に対し吸引を実施した。さらに、PT・OT単独実施に向けて、研修における理解度や不足点・課題を把握・整理するため、アンケート調査を実施した。アンケート項目は研修会の内容に準拠し、以下の通りに設定した。呼吸器病態生理、呼吸器の解剖生理、呼吸理学療法の評価・実際に関する知識、吸引の基礎知識・手順、機器の取り扱い、リスク管理、その他の知識編9項目と、鼻腔・口腔・気管吸引、清潔操作、吸引操作、吸引手順、状況に応じた対応、呼吸理学療法の実技、付属機器の操作、その他の実技編11項目であった。各項目に対し、更に知識・技術を深める必要性を5段階で調査し、その具体的内容を自由記載欄に記入させた。
【説明と同意】
 本研究の趣旨を全ての対象者に十分説明し、文書にて同意を得た。
【結果】
 必要度が高かった上位3項目は、知識編では、1)呼吸理学療法の評価に関する知識、2)リスク管理、3)呼吸理学療法の実際に関する知識、となり、実技編では、1)状況に応じた対応、2)呼吸理学療法の実技、3)吸引操作についてであった。各自由記載欄では、痰の貯留等・吸引前後における具体的評価、ポジショニングの作り方などの実際、評価・実技に関する具体的内容や、一連の流れについて、嘔吐をした場合、チューブの挿入方向やとぐろを巻いた場合の対応等、吸引操作時の具体的対処法などが挙がった。全体の傾向として、1)呼吸理学療法の評価・実際について、2)臨床場面に即した具体的な方法や一連の流れについて、3)個々の症例や状況に応じた対応能力について、の3項目が重要視されていることが考えられた。
【考察】
 アンケート結果より、1)吸引行為以前の要素となる排痰等の呼吸理学療法評価・実際に関する内容が重要視されていた。これは、PT・OTは吸引技術のみならず、排痰に関する呼吸理学療法の知識・技術と共に、吸引の適応を判断する能力の獲得が必要不可欠になる事に加え、今回は呼吸理学療法の経験の少ないセラピストの能力を十分把握・考慮した上で研修会の内容を設定できていなかったことが考えられる。2)臨床場面に即した具体的な方法や一連の流れが重要視されたのは、今回の研修内容が、知識として手順・方法等を学ぶ形式となってしまい、臨床場面や一連の流れを具体的に想起させることが不十分であったことが考えられる。3)個々の症例や状況に応じた対応能力が重要視されたのは、看護師の報告においても、新人看護師が吸引を習得する上で『不確かな手順と未熟な手技』『状況に応じた対応・対処への困惑』等が課題として挙げられていた。これらは、我々も同様に経験不足によるものが影響していると考えられ、吸引技術向上の為の課題であるといえる。これらのことを踏まえると、以下の3点が改善点として考えらえた。1)各セラピストの呼吸理学療法の能力を把握・考慮した上で研修会の内容とレベルと内容量を適切に設定する必要があったこと。2)実際の臨床に即した症例を一連の流れに沿って提示するなど、『課題解決型』研修方法も導入する必要があったこと。さらに、3)状況に応じた対応能力を高め、安全かつ質の高い吸引技術を提供するためのシステムとしては、吸引事例報告など経験を共有する機会を設けるなど永続的な取り組みが必要であることが考えられた。当院ではこのアンケート結果と考察を踏まえ、改善策として研修会と事例共有会を設定し実施している。
【理学療法研究としての意義】
 理学療法士による吸引実施に向けての取組みや改善点を考察し、養成機関や施設等で共有することで、より安全で質の高い研修内容の構築へとつながり、ひいては我々の吸引スキル向上に貢献できるものと考えられる。
著者関連情報
© 2011 社団法人 日本理学療法士協会 近畿ブロック
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