抄録
フッ化炭素C-Fとフェノール、アルコールなどとの水素結合は非常に弱いためいつでもどこでも観測される性質のものではない。
この弱い水素結合を有機化学者になじみの深い方法で確認することが可能かどうかを調べた。そのためには水素結合が起こりやすい分子設計を施すことが必要である。この目的のため、2-fluorophenyldiphenylmethanolと8-fluoro-4-methyl-1-naphthol並びにフッ素原子とフェノール性水酸基をもつシクロファンについてNMRと結晶構造解析により水素結合の存在を確かめた。またシクロファンを使った実験では水素結合の大まかな結合エネルギーも見積もることができた。