抄録
ルテニウム触媒を用いたオレフィンの反応は、近年開発されたGrubbs触媒に代表されるように、多くの報告例がある。しかし、複雑な配位子を用いて合成された触媒が多く、また高価で入手困難な原料が必要な場合も多い。そこで我々は、触媒として比較的安価で、入手容易な塩化ルテニウム(III)水和物を用い、オレフィン類との反応を行ったところ、オレフィン類の二量化反応やアルコール、チオール類との新規変換反応を見出すことができた。二量化反応においては、溶媒の極性によって、インデン型とマルコフニコフ型の異なったタイプの生成物を、またアルコール、チオールとの反応においては、原料オレフィンによって、マルコフニコフ型とanti-マルコフニコフ型の生成物を選択的に得ることができた。以上の結果について、報告する。