-
Agmon Noam
セッションID: IL-01
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
The role of protein relaxation in protein action has been modeled as a bounded diffusion process, involving a single Smoluchowski equation with a sink term. This is insufficient when the ligand within the protein, or the active site, can have multiple states. Examples are the states of the active site of an enzyme, such as cholesterol oxidase (unbound, bound, reduced) or the ligand location within myoglobin. To treat such situations, we consider multi-tier bounded-diffusion models, which involve coupled Smoluchowski equations for harmonic potentials with appropriate sink terms.
抄録全体を表示
-
保田 昌秀, 白上 努, 松本 仁
セッションID: IL-02
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
金属ポルフィリン錯体の機能性は多方面で注目されている。我々は、アンチモンポルフィリン錯体の安定性・軸機能性に注目して、その光触媒能を中心に研究している。軸配位子を利用してシリカゲルに同錯体を担持させ、可視光駆動光触媒として活用し、脱塩素化反応、エポキシ化反応、抗菌作用などに成功している。本講演では、今までに明らかにしてきた「軸修飾アンチモンポルフィリン錯体」の機能性について紹介する。
抄録全体を表示
-
時任 宣博, 篠原 朗大, 脇田 啓二, 笹森 貴裕, 武田 亘弘, 木村 将浩, 永瀬 茂
セッションID: O-01
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
既に我々は、非常に優れた立体保護基である2,4,6-トリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル(Tbt)基を用いて初めての安定なシラベンゼン、1-および2-シラナフタレン、9-シラアントラセンの合成・単離に成功し、それらの構造や反応性について報告している。今回、これらの実験結果をふまえて、さらに各種試剤との反応や、密度氾関数法を用いた理論計算を行い、実験結果と理論計算結果の比較・検討を行った。その結果Tbt基を有する含ケイ素芳香族化合物の構造や各種試剤との反応性および自己二量化反応について、興味深い知見が得られたので報告する。
抄録全体を表示
-
山村 正樹, 小松 史宜, 狩野 直和, 川島 隆幸
セッションID: O-02
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
既に我々はアゾ基を有する有機ケイ素化合物の配位数の光制御について報告している。今回、光による反応制御について検討したので報告する。アゾ基を有する高配位アリルシラン(
E)-
1を合成し、18-クラウン-6存在下、フッ化カリウムを作用させたところ、アゾ基へのアリル転位を含む多段階反応が進行し、シリカート
2が生成した。一方、(
E)-
1に対する光照射によるアゾ基の異性化で調製した4配位アリルシラン(
Z)-
1は、同様の条件では反応が進行しなかった。すなわち、ケイ素の配位数を光制御することで、反応の進行をON/OFFすることに成功した。本反応の機構についての検討と。アゾ基を有する高配位テトラフルオロジシロキサン(
E,
E)-
3のトリフルオロシラン
4への分解反応の光制御についても併せて報告する。
抄録全体を表示
-
吉田 正人, 村岡 恒宏, 斎尾 佳秀, 伊与田 正彦
セッションID: O-03
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
近年、フリーラジカル反応は有機合成化学、特に有機フッ素化合物の合成に重要な役割を果たしている。我々はラジカル反応を用いたフッ素化合物の合成法の開発を行ってきたが、本討論会では次の二つの反応を中心に報告する。1)フルオロアルキルラジカルとオレフィン類の反応を酸素存在下で行うことにより、フルオロアルキル基と酸素官能基を同時にオレフィンへ導入する多成分連結型の反応を開発した。2)ジフルオロシクロプロピルケトンとケイ素ラジカルの反応によりシクロプロパン環の開裂を伴った新規含フッ素シリルエノールエーテルの合成法を開発した。
抄録全体を表示
-
澤田 雄一, 原田 俊郎, 奥 彬
セッションID: O-04
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
ジアゾカルボニル化合物とエーテル性酸素とのロジウム触媒反応で極短寿命の酸素イリドが形成される。このイリドを求核剤として炭素型求電子剤カルボニル化合物と反応させ、炭素-炭素結合を形成させる新規反応の開拓を目的とした研究を行った。具体的には、環状アセタールを有するジアゾカルボニル化合物を用いて、カルボニル化合物とチタン化合物の存在下でロジウム触媒反応を行ったところ、イリド炭素上に炭素-炭素結合を形成した環拡大生成物を得ることができた。その結果と反応機構について報告する。
抄録全体を表示
-
景山 義之, 村田 滋
セッションID: O-05
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
チアゾリウム塩を触媒,アゾベンゼンを酸化剤とする酸化的チオールエステル生成反応の擬一次反応速度定数とその置換基効果を,
1H-NMRを用いて調べた。
p-置換ベンズアルデヒドを基質としたときに得られた反応速度定数のハメットプロットは曲線を描いた。さらに,ベンズアルデヒドの置換基によって,4,4'-二置換アゾベンゼンによる置換基効果の受け方が異なった結果を得た。これらの結果を総合することにより,ベンズアルデヒドの置換基の電子吸引性が高まるに従い,反応の律速段階が,触媒によるアルデヒドカルボニル炭素への求核攻撃から,酸化反応へとシフトしていることが結論づけられた。
抄録全体を表示
-
臼井 聡, 種井 亜依子, 岡村 睦雄, 小林 進二郎
セッションID: O-06
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
フェナシルスルホナートの極性溶媒中におけるフォトソルボリシス機構を溶媒効果、脱離基効果、中間体捕捉剤効果、レーザーフォトリシスにより検討した。フェナシルスルホナートは極性溶媒中光照射によりフェナシル炭素陽イオン中間体から生成した溶媒の求核置換反応生成物、フェナシルラジカルの抜き反応生成物を与える。また、この光反応ではフェニル転位反応生成物が得られているが、この反応生成物の収量はアジ化ナトリウムの添加では減少しなかったが、
t-ブチルニトロキシドの添加で減少したことからフェナシルラジカルを経由して進行しているものと考えられる。
抄録全体を表示
-
山高 博, アマル サライ チェトゥ, 浅野 努, 大賀 恭
セッションID: O-07
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
炭素−窒素2重結合の異性化反応には回転機構と反転機構の2種の経路が存在する。このうち、(CF
3)
2C=N-Arの異性化は反転機構で進行することが実験により明らかにされている。さらに、回転機構の枠内でplanarなTSを経る機構とperpendicularなTSを経る機構が置換基によって変化することも知られている。本研究ではこのような機構の変動がどのような微細なメカニズムで起こるのか、理論計算によって調べた。反応系としては、上記の他にPhCH=NPhやPhC(CF
3)=NPhを取り上げ、C=Nの両端の置換基の効果を検討した。その結果、置換基の電子効果によって遷移状態構造が徐々に変化する様子が見られた。講演では、分子動力学計算の結果も報告したい。
抄録全体を表示
-
杉村 高志, 大内 直子, 坂本 康博, 鄭 貴寛, 佐藤 安浩, 奥山 格
セッションID: O-08
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
不斉源にプロキラルな基質と試薬の前駆体を組み込んだ後、前駆体から反応活性種を発生させると、その分子内反応は不斉源によって立体制御される。不斉源部が長く柔軟な構造で基質と試薬部を結ぶ場合には、分子内反応に対する構造的制限が少なく、様々な反応が実行可能となる。このようなキラル架橋不斉合成は不斉源が単純な構造にも関わらず、高い立体選択性を示すこと、選択性がエントロピー項に由来すること、を我々はすでに報告している。今回は、基質部および架橋部の異なる化合物を用い、反応速度、NMRによる中間体の構造、架橋部の運動性の測定を行い、エントロピー項の誘起機構を解析した。発表では、架橋部の立体配座変換速度との関連についても考察する。
抄録全体を表示
-
戸田 芙三夫, 豊田 真司, 吉沢 一裕, 平野 晋弥, 仲松 靖剣
セッションID: O-09
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
種々の有機固体反応をIRスペクトルで追跡して,反応機構を研究した。特に,反応中間体の検出に努力し,その中間体の単離,別途合成で反応の経路を明らかにした。この研究で,従来の溶液反応では,発見できなかった中間体の生成が明らかになっただけでなく,特異な中間体の生成が有機反応を特徴づけていることも判明した。
抄録全体を表示
-
彼末 好史, 平賀 良知, 大方 勝男
セッションID: O-10
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
8種のジペプチドを基質として用いて、カルボキシペプチダーゼYによる酵素反応の
Kmおよび
kcatを求め、アミドの窒素原子上のアルキル置換基の影響について調べた。逆相HPLCによる測定から
Kmは基質の疎水性に関連していることが示された。グリセリンまたはスクロース添加によって反応溶液の粘性率を増加させると触媒定数
kcatはNアルキル置換基をもつ基質のほうがより大きく減少した。粘性は摩擦力として働き、大きく動く物体ほど大きく影響することから、Nアルキルの基質の加水分解反応において酵素はより大きなコンホメーション変化を伴って反応している事が考えられる。
抄録全体を表示
-
成田 吉徳, 松井 栄樹, 谷 文都, 島崎 優一
セッションID: O-11
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
生体内においてはチロシルラジカルが、電子とプロトン移動を伴う多くの主要な反応過程において鍵中間体となっている。しかし、フェノキシルラジカルは一般的に不安定であり、有機化学的に十分な反応活性のあるフェノキシルラジカルを安定的に反応に用いることは困難とされている。本発表では、プロスタグランジン合成酵素反応に見られるように‘双冠ポルフィリン’鉄錯体上に構築した空隙内に安定的にナフトキシルラジカルを発生させ(添付図参照)、これより1,4- ジエンの水素引き抜き、酸素付加反応により立体選択的に1,3-ジエニルヒドロペルオキシドを合成可能とした。この中間体構造の分光学的特徴と基質との反応の両面から議論する(Angew. Chem. Int. Ed. in press)。
抄録全体を表示
-
石塚 智也, 大須賀 篤弘, 古田 弘幸
セッションID: O-12
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
ポルフィリン異性体の一種である、N-混乱ポルフィリン(NCP)は、混乱ピロールと呼ばれる、環外周に窒素を向けたピロール環を有するために、通常のポルフィリンには見られない興味深い化学特性を示す。なかでもNCPの持つ2つのNHが、両方とも環内部に存在する場合と、一方が環外周部にある場合とでは、NCPの芳香族性、電子状態が大きく異なり、両者の互変異性体間に光物性や反応性に大きな差異が生ずる。我々は、互変異性体の相対的な安定性を溶媒によって制御しうることを、既に報告している。今回、我々は、この互変異性に対する溶媒、置換基、濃度、同位体の各種効果を確かめ、またこの互変異性によるNCPの反応性の制御について検討したので、その結果を報告する。
抄録全体を表示
-
蔡 喜臣, 原 道寛, 藤塚 守, 真嶋 哲朗
セッションID: O-13
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
2つの波長の異なるナノ秒レーザーを同期発振させる2波長2レーザー照射装置を使用して、種々の芳香族化合物の高励起三重項状態の寿命、エネルギー移動、三重項増感分解反応などの動的挙動について明らかにした。第1のレーザー照射によって種々の芳香族化合物の三重項励起状態を生成させ、その寿命内にそれらの三重項励起状態の吸収波長に合わせた第2レーザーを照射することによって、高励起三重項状態を生成され、その動的挙動について明らかにした。その結果、芳香族化合物の三重項励起状態の寿命は分子に依存すること、三重項エネルギー移動が起こることなどを見出したので、これらについて報告する。
抄録全体を表示
-
大久保 敬, 小谷 弘明, Tkachenko Nikolai V., Lemmetyinen Helge, 福住 俊一
セッションID: O-14
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
アセトニトリル中で10-メチルアクリジニウム誘導体の9位にメシチレンを結合させた連結系分子にレーザー光照射を行うと、分子内電子移動反応が10ピコ秒の寿命で進行しアクリジニルラジカル及びメシチレンラジカルカチオンの過渡吸収スペクトルが観測された。電荷分離状態の分子内電荷再結合過程は非常に遅いために溶液中では分子間で起こっていることがわかった。電気化学測定より求めた電荷分離状態のエネルギーは2.3 eV であり非常に高いことも見いだし、種々の光触媒反応に用いることが出来ることを見いだした。本研究では、自然界を凌ぐ長寿命、かつ、高エネルギーの電荷分離状態を効率よく生成することに成功した。
抄録全体を表示
-
前多 肇, 西村 弘一, 早水 智生, 水野 一彦
セッションID: O-15
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
スチルベンやその誘導体の光化学的性質や光化学反応に対する反応性は古くから活発に研究されているが、環状スチルベノファンの光化学はこれまでほとんど知られていない。本研究では、ジメチルシリル基4つとスチルベン2つを環状につないだ大環状化合物と、シス-スチルベンの4,4'位をケイ素官能基で連結した中員環スチルベノファンを合成し、それらの光反応性や光化学的性質について比較検討した。その結果、ベンゼン溶媒における直接光照射で(2+2)光環化付加反応が進行すること、酸素飽和下における光照射でフェナントレノファンが生成すること、三重項増感剤共存下における光照射ではスチルベン部位のシス-トランス光異性化反応が進行すること、および吸収・蛍光特性が構造の歪みとよい相関を示すことを明らかにした。
抄録全体を表示
-
平井 克幸, 門口 恭子, 富岡 秀雄
セッションID: O-16
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
我々は三重項ジフェニルカルベンのオルト位に立体保護基を導入することによって、室温溶液中で数十分間存在できる長寿命三重項カルベンの発生に成功した。今回、オルト位に種々のアリール基を導入したジフェニルジアゾメタンを合成し、その光分解によって発生させたカルベンの反応性と動力学を生成物分析、分光分析及びレーザー閃光光分解(LFP)法によって検討した。その結果、77KでのESR測定では三重項カルベンが観測されたが、室温での光分解後の生成物は、一重項カルベン由来の生成物と考えられるフルオレン誘導体であった。これら結果とLFP研究の結果から反応機構を詳細に検討する。
抄録全体を表示
-
安倍 学, 川南 聡, 石原 千津子, 野島 正朋
セッションID: O-17
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
我々は、これまでシクロペンタン1,3-ジラジカルの最安定スピン多重度及び反応挙動に及ぼす2位上の置換基効果について検討を行ってきた。本研究では、1,3-ジラジカルの2位にケイ素官能基を導入し、その最安定スピン多重度ならびに反応性について検討を行った。その結果、ケイ素官能基を有する一重項ジラジカルは分子内化環生成物を与えず、ケイ素官能基の転位を伴ったシクロペンテン誘導体を与えた。この注目すべきジラジカル種の反応性に及ぼすケイ素官能基効果は、ジラジカルの二つのスピンが非結合性軌道Ψ
Aに収容される方がΨ
Sに収容されるよりもエネルギー的に有利であるためであると考えられる。発表では量子化学計算を援用した考察を基に、2位にケイ素官能基を有する1,3-ジラジカルの反応性を明らかにする。
抄録全体を表示
-
池田 浩, 田中 太, 宮仕 勉, 秋山 公男, 手老 省三
セッションID: O-18
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
2,2-ビス(4-メトキシフェニル)-3,3-ジメチル-4-メチレンシクロブタノン(1)は,光増感電子移動反応により,2,2-ビス(4-メトキシフェニル)-4-イソプロピリデンシクロブタノン(2)へと異性化した.その過程で発生する中間体は,テトラメチレンエタン(非ケクレ分子中間体,TME)ラジカルカチオンの酸素類縁体(OTME)であった.また2は,光増感電子移動反応では1を与えず,C1-C2結合の開裂により反応が進行した.この反応により発生する中間体も,カルボニル炭素にカチオンが局在する.これらの新規中間体の発生機構,電子状態の評価等について発表する.
抄録全体を表示
-
小林 進二郎, ティドウェル トーマス
セッションID: O-19
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
ベンジロキシアセチレンの熱分解反応により、ケテンとフェニルカルベンとが生成すると思われる反応を見いだした。この反応は
t-ブトキシアセチレンの熱反応で認められている反応と似ているが、前者では1,4-水素転移が、後者では1,5-水素転移が生起している。
抄録全体を表示
-
脇坂 昭弘, 望月 俊介, 小原 ひとみ
セッションID: O-20
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
溶液中で複数の異なる相互作用が同時に作用するとき、相対的に弱い相互作用による不安定化を補うように、相対的に強い相互作用によるクラスター形成が自己組織的に進行する。これは液相に特有なクラスター形成機構であり、共存する溶媒やイオンによって、大きな変化が起こる。今回、DNA複製反応やクレゾール重合反応に対する溶媒効果や塩効果について、この液相に特有なクラスター形成がどのように作用したかについて報告する。
抄録全体を表示
-
木下 知己, 岡崎 隆男, 久恒 邦裕, 従野 剛, 脇坂 昭弘, 望月 俊介, 三島 正章
セッションID: O-21
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
シクロペンタジエニドイオンと対カチオンのナトリウムイオンの溶媒和構造を、液滴断片化質量分析法により検討した。シクロペンタジエニドイオンに溶媒分子がついたクラスターの一部が初めて観測された。シクロペンタジエニドイオンやナトリウムイオンについた溶媒分子の組成分布は、イオンが共存しない場合とまったく異なる特徴を示しており、先に報告したアルコール溶媒中のトロピリウムイオンの場合と対照的である。両者の比較、溶媒和クラスターの生成のしゃすさと溶媒分子の種々のパラメータ、イオンの反応性などとの相関関係について、実験および理論計算による検討結果を総合的に発表する。
抄録全体を表示
-
速水 醇一, 竹内 怜介, 堀田 栄祐, 堂前 直樹
セッションID: O-22
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
無極性溶媒中では芳香族或いは脂肪族一級アミン、二級アミンが会合することが知られていて、二量体を主とする会合体が単量体よりも遥かに高い求核性を持つと主張されているが(いわゆる二量体求核種機構)、それを確実に証明した研究例は知られていない。我々はマイケル型求核付加反応、芳香族求核置換反応等をプローブとしてベンゼン溶媒中でアニリンと環置換アニリン類を用いて速度論的研究を行い、トリフルオロアセチルビニルエーテル、トリフルオロアセチルビニルスルホン、ハロゲン化ピクリル、ハロゲン化ジニトロベンゼン類について、会合体が速度論的に卓越した求核性を示さない例を明らかにした。
抄録全体を表示
-
永野 圭哉, ウッディーン モハマド カビール, 藤尾 瑞枝, 都野 雄甫
セッションID: P-01
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
これまで、我々は2,2-ジメチル-1,1-ジフェニルプロピル系の加溶媒分解における二つのフェニル基上の置換基効果の解析を湯川-都野式を用いておこなってきた。その結果、対称ジ置換体では二つのフェニル基が同時にねじれたE-コンフォメーションをとるということがわかった。しかし、置換基が異なる非対称体の場合は電子供与性能力のより大きい置換基をもつフェニル基が反応中心と共平面に近づき、もう一方がよりねじれたPT-コンフォメーション をとることがわかった。今回は、更に広範囲の置換基効果解析の結果と
ab initio計算によるカチオン構造の結果とを合わせて、この系の置換基効果における立体依存性について報告する。
抄録全体を表示
-
アロム モハマド アサドル, ウッディーン モハマド カビール, 藤山 亮治, 藤尾 瑞枝, 都野 雄甫
セッションID: P-02
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
β位のケイ素基はカチオンを強く安定化し、そのソルボリシスはC叉はH体に比べて約10
12倍の加速効果が観測されている。この様なβ-ケイ素効果は、ケイ素-炭素σ結合と反応中心のσ-π超共役による安定化叉はケイ素が橋架け構造のいずれかにより説明されているが、現在のところその判別は明確ではない。そこで我々は、Si基上にアリール基を持つ種々のβ-ケイ素化合、2-(ジメチルフェニルシリル)エチル誘導体を取り上げ、60 % 水性エタノール中、50°Cでのソルボリシス速度に及ぼすフェニル基の置換基効果を湯川-都野式を用いて解析した。得られたρ値と側鎖の構造変化との関係に基づいてβ-ケイ素のカチオン安定化機構の判別について議論する。
抄録全体を表示
-
加藤 秀之, 藤山 亮治, 藤尾 瑞枝
セッションID: P-03
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
β-ケイ素化合物の溶媒効果解析による溶媒の相関線間の分散を調べる目的で、1-(diphenylmethylsilyl)-2-propyl 3,5-dinitrobenzoate の種々溶媒中でのソルボリシス反応速度を測定した。Winstein-Grunwald式による解析結果は溶媒系に分散が見られ、またTsuno-Fujio式では電荷の非局在化を示すパラメーターが負の値をとる結果となった。フェニル基が1置換の類似化合物では溶媒効果解析による電荷分散の考察が可能であったことから、電荷の分散によらない溶媒系の分散がβ-ケイ素化合物にあることがわかった。
抄録全体を表示
-
中田 和秀, 藤尾 瑞枝, 西本 吉助, 都野 雄甫
セッションID: P-04
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
我々は既に理論計算によるベンジル位カルボカチオンの安定性に及ぼす置換基効果が気相における実験値を精度よく再現することを報告した。今回、環置換α-クミルカチオンに水分子を溶媒和させた化学種について安定性を理論的に決定した。まず、カチオン中心に水を1分子配位させたクミルカチオンのエネルギーを非経験的分子軌道計算により求め、1水和系の相対安定性を水和環置換体と水和無置換体とのヒドリド移動平衡のエネルギー差から決定した。更に、配位水分子の数および位置を変えた水和系について、同様に置換基効果を求めた。これらの溶媒和モデルの結果を基に、溶媒中のクミルカチオンの安定性や反応性におよぼす置換基効果が、どのような溶媒効果モデルを考慮すれば再現されるか検討した。
抄録全体を表示
-
清水 宣次郎
セッションID: P-05
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
Winstein式を分子内溶媒和という新しい観点から見直すと、基質の疎水性の違いが反映する水中のイオン化挙動を、有機溶媒中の挙動と分けて取り扱う必要が明らかになる。非水溶媒系ではS
N1基質は例外なく、オリジナルY値に対して単一の直線相関を示し、基質固有のm値が定義できる。m値はイオン化遷移状態で脱離アニオンがどの程度フリーであるかを示し、イオン対の状態を知る指標となる。この新しい解釈に基づき、イオン化機構を議論する。
抄録全体を表示
-
小林 牧子, 前田 大輔, 清水 宣次郎
セッションID: P-06
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
これまで高反応性の故に全く報告例の無いt-ブチル基質におけるスルホナート脱離基のソルボリシス挙動を、1,1-bis(trimetylsilyl)methanesulfonate脱離基を用いて広範な溶媒中で調べた結果について報告、議論する。非水溶媒をベースにした溶媒効果解析では、予想に反してS
N2タイプの寄与が顕著に現れる。そのような寄与が認められない塩化物とは対照的である。この特異な溶媒効果についてp-メトキシベンジルスルホナートおよび関連基質の結果とも併せて議論する。
抄録全体を表示
-
岡村 睦雄, 村井 正志, 菅谷 英昭, 斎藤 浩史, 臼井 聡
セッションID: P-07
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
炭素陽イオン生成反応への各種電子求引性基の効果・考察を報告する。α位またはβ位に電子求引性基(CF
3, CN, COMe, COOMe)をもつβ-アリールエチルトリフレートを合成しソルボリシス反応を解析した。NMRによる反応追跡によりアリール関与反応速度k
Δを,競争するk
sやE2反応から分離決定できた。β位の電子求引性基はそのσ*置換基定数にほぼ比例した減速効果をk
Δに与えていた。しかしながら,α位についてはCN基だけでなく,共鳴安定化を否定する報告のあるカルボニル置換基でも電子求引性による減速効果を打ち消す効果が観測された。α,α-diCF
3でも減速は小さく,原系の不安定化が考えられた。逆電子供与共鳴,原系の不安定化について理論計算も含め検討した。
抄録全体を表示
-
村井 正志, 臼井 聡, 岡村 睦雄
セッションID: P-08
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
β位にアリール基を持つ化合物のソルボリシスでは特殊な架橋カチオンであるフェノニウムイオン中間体が生成することが知られている。当研究室では、α位またはβ位に電子求引性基を持つβ-アリールエチルトリフレートを合成し、その置換基が及ぼす効果について研究している。α位にπ系を持つシアノ基については、何らかの減速効果を打ち消す加速効果が観測されており、π系を持たないトリフルオロメチル基をα位に二つ導入した化合物について検討した。ソルボリシスの追跡、生成物解析はNMRによって行い、反応機構、反応速度の解析および分子軌道計算によるGSの不安定化による加速効果について検討した。
抄録全体を表示
-
菅谷 英昭, 臼井 聡, 岡村 睦雄
セッションID: P-09
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
反応中心のβ位にアリール基をもつ化合物のソルボリシス反応では、フェノニウムイオンという特殊な架橋構造を持つカルボカチオンの生成が知られている。この系において電子求引性基によるカチオンの不安定化の効果およびCN基のような不安定化と同時に共鳴により安定化も与えうる置換基の効果を検討してきた。今回共鳴がありうる二重結合をもちかつ合成に重要な置換基のCOOMeをα位にもつβ-aryl-α-COOMe-ethyl triflateを合成し、それらの効果を検討した。アセトリシスでは、15%程度の
ksが見られたが、ほとんどはアリール関与
kΔで転位生成物が得られ、phenylethyl体の
kΔより10
2倍遅いとみつもられた。10
6倍の減速があったα-CF
3体と比べると、共鳴と思われる加速がα-COOMe体ではあるためと考えられる。
抄録全体を表示
-
ウッディーン モハマド カビール, 藤山 亮治, 清岡 俊一, 藤尾 瑞枝, 都野 雄甫
セッションID: P-10
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
検出にはB-11NMRを用いて、高度無水条件下でジフェニルクロロボランを前駆体として種々のアプロティック溶媒中で、テトラフェニルボレート誘導体アニオン塩とカチオン・アニオンペアリングや、ルイス酸(BCl
3, AlCl
3, SbCl
3)との組み合わせでホウ素カチオンの創製を試みた。ニトロメタン中、SbCl
5を用いた時、ホウ素カチオンの発生に成功し、2,2'-ジビリジン塩として同定した。溶液中における2価のホウ素カチオンの物理有機化学的性質について得られた種々の知見について報告する。
抄録全体を表示
-
金 岏赫, 井原 賢二, 藤田 守文, 奥山 格
セッションID: P-11
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
ヘキサフルオロイソプロピルアルコール中、塩基存在下でシクロヘキシリデンメチルヨードニウム塩を加溶媒分解すると、シクロヘプテニルカチオンを経由してシクロヘプチン中間体が効率よく生成することを見出した。一方、塩基性トリフルオロエタノール中では、ヨードニウム塩のアルファ脱離によってシクロヘキシリデンキリデンカルベンが生成するものの、シクロヘプチンへの転位は進行しない。中間体捕捉実験によってシクロへプチン中間体の生成収率を見積もり、重水素標識実験およびキラリティープローブ実験を用いてシクロへプチン中間体の生成経路について検討を行った。
抄録全体を表示
-
藤田 守文, 金 岏赫, 藤原 康次, 奥山 格
セッションID: P-12
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
シクロヘキセニルヨードニウム塩とシアン化物塩との反応をクロロホルム中で行ったところ、ビニルまたはアリル位でシアンが置換した生成物が得られた。シクロペンテニルヨードニウム塩と酢酸塩との組み合わせでも、同様の生成物が得られた。重水素標識実験の結果、求核剤がヨードニオ基のベータ位にマイケル付加し、生成したカルベンが1,2-ヒドリド移動してアリル置換体に至ると考えられる。これらの生成物分析に加え反応速度および速度論的同位体効果の結果を用いて反応機構の詳細に検討し、従来のヨードニウム塩への求核置換反応との差異を議論する。
抄録全体を表示
-
藤原 康次, 毛利 洋, 風神 豊, 藤田 守文, 奥山 格
セッションID: P-13
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
アルキリデンシクロプロパノンシリルアセタールをジクロロメタン中室温で四塩化スズや四塩化チタンなどのルイス酸と作用させると、シクロプロパン環が開裂しビニル位で塩素置換した生成物が得られることを見出した。この反応は形式上、ビニル位での求核置換反応によって炭素-炭素結合が開裂している。ルイス酸によるアセタールの脱離によって生成するオキソニウム塩を経由してビニル求核置換反応が進行していると考えられる。
抄録全体を表示
-
江口 明良, 藤田 守文, 杉村 高志, 奥山 格
セッションID: P-14
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
ナフタレン化合物とオルトクロラニルに対してアセトニトリル中光照射すると [4+2] 付加生成物が得られ、不斉源を組み込むことで面区別付加が進行することを見出した。光電子移動により生成したナフタレンラジカルカチオンに対して不斉源が求核的に相互作用することで、付加面に選択性が発現すると考えられる。ラジカルカチオンの円二色性スペクトルを測定したところ、高い面区別性を発現する不斉源を持つ場合に強いコットン効果が観測できた。
抄録全体を表示
-
林 春英, 鄭 貴寛, 杉村 高志, 奥山 格
セッションID: P-15
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
7,7-ジメチルシクロヘプタトリエンの3位に(R,R)-2,4-ペンタンジオール(PD)をエーテルとして組み込んだ化合物を合成し、4-phenyl-1,2,4-triazoline-3,5-dione (PTAD)を付加させた。反応を塩化メチレン中で行うと、1,4位への環化付加体が定量的に得られ、その立体選択性は10対1以上であった。立体選択性はアセトニトリル中では低下し、PD部の水酸基を保護すると逆転した。NMRを用いて反応を追跡すると、反応速度論的な生成物は3,6位への付加であるが熱力学的には不安定であることがわかった。発表ではこの1次生成物の立体化学も含めてその制御因子を考察する。
抄録全体を表示
-
上村 明男, 村上 記一, 川原 富貴子, 岡本 浩明
セッションID: P-16
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
最近われわれは非対称フマル酸エステルもしくはアミドに対して、反応条件を選択するだけで、チオールのマイケル付加が非常に高い位置選択性で進行することを見出した。この反応の位置選択性の見られる理由について、競争反応および分子軌道計算を用いて検討した。アクリル酸アミドとエステルのチオールの競争的付加では、塩基触媒ではエステルのほうがアミドに比べて速くなるのに対して、塩基非存在下ではアミドのほうが逆に速度が速くなることがわかった。フマル酸エステルアミドとそれをプロトン化したイミニウムイオンについて分子軌道計算を行ったところ、付加の逆転がこの寄与によることが明らかとなった。
抄録全体を表示
-
大畑 慎治, 川上 峰規, 安倍 学, 野島 正朋
セッションID: P-17
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
カルボニル化合物とアルケンとの光環化付加反応(Paterno-Buech反応)に関する研究は、これまで、機構論的のみならず合成化学的にも数多くの研究が行われてきた。本研究では、非対称フラン誘導体のPaterno-Buechi反応で発現する位置及び立体選択性に対する温度効果を検討し、それらの発現機構を明らかにすることを目的とした。反応の量子収率に及ぼす温度効果ならびに量子化学計算の結果などから、中間に介在する三重項1,4‐ビラジカルの立体配座が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
抄録全体を表示
-
阪上 達也, 大木 道則, 豊田 真司
セッションID: P-18
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
アリル=フェニル=セレニド類のmCPBA(m-クロロ過安息香酸)酸化におけるm-クロロベンゾエートの付加体や1,2-および1,3-ジオールのような異常生成物の生成機構を調べるために、アミン存在下でのmCPBA酸化を行ったところ、m-クロロベンゾエートの付加体やジオール体得られずアリルアルコールのみが得られることが分かった。またtBuOOHを用いて酸化を行っても、アリルアルコールのみ生成するが、tBuOOHとmCBA(m-クロロ安息香酸)を同時に作用させるとm-クロロベンゾエートの付加体とジオール体が生成した。また系中の水の量を変えることによりジオール体の生成比が変わることが分かった。
抄録全体を表示
-
山本 陽介, 松川 史郎, 秋葉 欣哉
セッションID: P-19
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
アピコフィリシティーに反する
C-アピカル
O-エクアトリアルスピロホスホラン(
O-cis体)のαアニオンと求電子剤との反応を検討した。ベンズアルデヒドとの反応において、
O-cis体はオレフィンを与えずにアルデヒド付加体を与えたのに対し、対応する
O-アピカル
C-エクアトリアル(
O-trans)異性体は通常のWittig型反応を起こして定量的にオレフィンを与えた。
O-cis体の反応中間体のX線結晶構造解析に成功し、その構造がオキサホスフェタン環を有する6配位化合物であることを明らかにした。
抄録全体を表示
-
田村 由紀子, 宮永 渉, 高木 隆吉, 大方 勝男
セッションID: P-20
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
スピロ環を有する交差共役ケトンと様々なジエンとのDiels-Alder反応を行い、その面選択性について検討した。シクロペンタジエンとのDiels-Alder反応を行ったところ、スピロラクトン、スピロエーテルは高い面選択性でスピロ環の酸素側からジエンが付加した生成物が得られたが、スピロケトンとの反応は選択性が低かった。この反応に関して、溶媒として塩化メチレン、アセトニトリル、トリフルオロエタノールを用いて、その溶媒効果や反応速度を調べ、理論計算を行った。現在、キラルなルイス酸を用いたDiels-Alder反応についても検討している。
抄録全体を表示
-
隈本 康司, 奥田 佳朗, 森山 真里, 末永 仁士, 小槻 日吉三
セッションID: P-21
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
液晶化合物は1,4-二置換タイプのシクロヘキサン骨格を有するものが多く、液晶材料として有用なのはそのうちトランス異性体のみであることが知られている。しかし、その合成工程において、生成物はシス/トランスの混合物として得られる。そのため、液晶性がなく利用価値のないシス体をトランス体へ異性化させる反応が必要とされている。今回、本異性化反応について検討した結果、トリフルオロメタンスルホン酸が有効な試薬となることを見つけた。講演では本異性化反応における溶媒効果、反応機構を含めた有用な知見について報告する。
抄録全体を表示
-
堀 憲次, 西野 裕美
セッションID: P-22
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
アシルシランはPd触媒存在下でアリルエステルの良いアシル化剤として働くことが報告されている。辻らは、トリフルオロ酢酸及び酢酸存在下で実験を行ったところ、前者がβ, γ-不飽和ケトンを与えるのに対し、後者は反応しないことを見いだした。この興味深いアシル化反応の機構は、詳しい実験にも関わらず解明されていない。そこで本研究では、B3LYP/LANL2DZレベルの密度汎関数計算を用いてその機構の詳細を明らかにすることを目的とした。その結果、配位したアシルシランのケイ素の周りが三角両錘型の構造を持つ遷移状態を経て反応が進行することが判明した。更に、反応前駆体であるPd二核錯体の安定性が、反応の進行の容易さに影響することも明らかとなった。
抄録全体を表示
-
大久 真幸, 相田 美砂子, 山高 博
セッションID: P-23
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
ハロゲン化アルキルの置換反応にはアルキル基の種類によってS
N2反応とS
N1反応の異なる二つの反応機構がある。本研究ではこの反応機構の違いの要因を量子化学的観点から明らかにする。計算対象はCl-CR
3(R=H or CH
3)のハロゲン交換反応である。
まず気相中での非経験的分子軌道法計算を行い、反応の進行に伴うオービタルの変化がメチル置換基数の違いによって異なることを見出した。次にQM/MM法を用いて水溶液中における自由エネルギー変化の計算を行った。塩化メチルのハロゲン交換反応は水溶液中においてもS
N2型で進行し、活性化エネルギーは気相中に比べて高いという計算結果が得られた。
抄録全体を表示
-
山高 博, アマル サライ チェトゥ
セッションID: P-24
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
ピナコリル系の分子内転位反応について、ポテンシャルエネルギー(PE)面上の反応経路が協奏機構を示唆するのに対し、動力学シミュレーションでは、反応分子の持つ運動エネルギーの影響のため、段階的機構の反応経路が得られる事を既に報告した。これは、PEの要請にもかかわらず、C-O伸縮とC-C-C変角の反応モードが独立に(非同期で)起こったものとして理解できる。同様の現象は、複数のモードの関与する反応にごく一般的に見られる可能性がある。変角と結合開裂、回転と結合生成、さらには溶媒和と基質の構造変化などが例としてあげられる。Beckmann転位やプロトン移動反応度を例に取り、PE計算と動力学シミュレーションによる研究結果を発表する。
抄録全体を表示
-
生田 靖弘, 友田 修司
セッションID: P-25
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
Meyersのピロリジノンエノラートのアルキル化反応の極めて高い面選択性(endo : exo = 99 : 1)に関しては多くの謎があり,MeyersやHoukらにより詳細な議論がなされている.反応活性種をアニオンと仮定し,「遷移状態における試薬とβ位水素との立体効果(torsional strain)」が選択性の起源であるとされている.我々は量子化学計算により系中に存在し得るエノラート化学種を詳細に検討した結果,リチウムエノラートが反応活性種であり,系中における最安定エノラートの濃度及びそのフロンティア軌道の広がりと接近空間の面差によって選択性が支配されていることを見出したので報告する.
抄録全体を表示
-
岡崎 隆男, 木下 知己, Laali Kenneth K.
セッションID: P-26
発行日: 2003年
公開日: 2003/09/16
会議録・要旨集
フリー
多環式芳香族炭化水素から生じるカルボカチオンは、生体内での発がん機構や代謝反応において重要な中間体である。多環式芳香族炭化水素の中でアズレノフェナントレンは突然変異を誘発する物質として報告されている。そこで種々のアズレノ多環式芳香族炭化水素由来のカルボカチオンの電子構造について理論計算の結果を報告する。
抄録全体を表示