2014 年 2014 巻 65 号 p. 19-23
コムギ縞萎縮病の生物防除法の開発に資するため,畑作土壌に栽培したコムギ根から細菌1205 菌株を分離し,これらの菌株とテンサイ根圏由来1 菌株(SB-K88 株)の計1206 菌株から本ウイルス媒介微生物Polymyxa graminis の感染抑制効果が高い菌株を選抜した.検定は穴あきチューブによる砂耕栽培で行い,P. graminis の休眠胞子塊3.5~7.0×102 個を接種したコムギに,King’ s B 液体培地培養細菌液を3 回潅注処理(播種時,出芽後7 日,21 日)した.2 ヶ月間栽培後,コムギ根へのP. graminis の感染率を調べ,防除価53.6~100 を示す23 菌株を選抜した.選抜した菌株について,他の処理方法を検討したところ,播種時潅注1 回処理では,23 菌株中3 菌株で感染抑制効果が認められ,King’ s B 寒天培地培養菌体の種子処理では,SB-K88 株でのみ感染抑制効果が認められた.SB-K88 株は,テンサイそう根病の病原ウイルス媒介菌(P. betae)およびテンサイ苗立枯病菌(Pythium 属菌,Rhizoctonia solani)の感染を抑制することがすでに知られている細菌であるが,本研究では新たに,同菌株がP. graminis のコムギ根への感染抑制効果も有することを明らかにした.