北日本病害虫研究会報
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モモのモモシンクイガへの広域的な交信かく乱処理継続の効果
吉田 昂樹 菅野 孝盛川口 悦史荒川 昭弘
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2018 年 2018 巻 69 号 p. 191-194

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抄録

モモシンクイガ(Carposina sasakii)に対し15年以上,モモ,リンゴ,ナシの合計面積で1000 ha以上の広域で交信かく乱処理を継続している福島県福島市の果樹栽培地域で3箇所のモモほ場を選定し,2016年と2017年に通常ルアー及び改良型ルアーを用いた性フェロモントラップによる発生消長調査を行った結果,いずれのトラップでも誘殺されず,被害果も見られなかった.交信かく乱剤の使用実績がない三春町のモモほ場で,複合交信かく乱剤を慣行防除に上乗せ処理し,福島市と同様に調査を行った結果,2016年にはモモシンクイガの誘殺がなかったが,2017年に改良型ルアートラップで2頭誘殺された.交信かく乱剤無処理の慣行防除のみの区では改良型ルアートラップに2016年に8頭,2017年に16頭の誘殺があった.被害果は2016年,2017年ともにいずれの区でも見られなかった.以上から,交信かく乱剤を広域で長期的に処理することによりモモシンクイガの生息密度が著しく低下したことで,被害が見られなくなると考えられた.

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