2017 年 65 巻 10 号 p. 314-320
大気を有する惑星への探査機降着(EDL)では,パラシュートが空力減速装置として利用されている.火星のような地球大気に比して低密度大気の場合,減速のための動圧を十分に得るために超音速状態での傘体展開となる.傘体前面の流れ場は,探査機本体からの後流,吊索からのはく離流,離脱衝撃波,および離脱衝撃波背後の亜音速領域が干渉し,超音速と亜音速状態が混在する複雑な状態となり,時に衝撃波の破壊的大変形を引き起こす.同種の現象は,超音速空気取入口,あるいは再突入体先端のキャビティ周囲などでも発生し,1950年代から研究事例があるものの,キャビティ内部の音響共鳴と対流の相互関係と衝撃波振動を体系的に報告した例は少ない.筆者らは,これらの点に着目し,衝撃波振動の駆動メカニズムの解明に取り組んでいる.本稿では,超音速風洞実験と数値解析によりこれまで得られた知見について紹介する.