2017 年 65 巻 4 号 p. 89-95
本研究では,水素社会の普及に対応する将来の航空機システムについて,主に推進系の比較検討を行った.水素は単位質量あたりの発熱量が高く,搭載燃料を軽量にできる利点があるが,密度が低くタンク容積が大きくなることが欠点となっている.また,燃料電池自動車等に用いられている固体高分子形燃料電池(PEFC)等による電力変換が可能なこと,極低温の液体水素は冷熱源として利用しやすく,電動機器を超電導としやすいことも特徴としてあげられる.これらを踏まえ,化石燃料を使用し燃焼により動力を得る現在の推進システムをベースに,推進の電動化を含む将来の推進系候補を17ケース選定し,推進系を構成する要素の効率,重量見積もりから航続距離の簡易的な比較を行った.この結果,飛行速度の低い小型機において,液体水素を利用するケースが将来技術レベルにおいて競争力を得やすい結果となった.