2019 年 67 巻 11 号 p. 369-374
本解説では,超小型衛星打上げ機(SS-520 4号機および5号機)の計画立案から打上げ実験について総括した.本ロケット実験は,先進的な民生技術を実装した宇宙機器の宇宙実証実験として計画立案され,宇宙科学研究所の観測ロケットを実行基盤として活用,準備からロケット打上げまで比較的短期間で実行した.2017年1月に打上げられたSS-520 4号機は,発射後約20秒で通信系の不具合が発生したため軌道投入実験を中断した.本報では推定原因究明の経緯を中心に述べた.2018年2月に打上げたSS-520 5号機により,超小型衛星TRICOM-1R(愛称たすき)の軌道投入に成功した.5号機実験を通じて4号機の不具合原因の推定および技術対策の妥当性や超小型衛星打上げロケットとしての成立性を実証することができた.そして,計画の主たる狙いであった宇宙機器に実装した民生品が宇宙機に適用可能であることを実証した.