2024 年 72 巻 6 号 p. 219-225
宇宙エレベーターのテザーの主材料とされるカーボンナノチューブ(CNT)も他の材料と同様に温度変化により伸縮する.CNTの熱膨張率の大きさは10-6〜10-5程度と小さいが,宇宙エレベーターの地球の周りの公転運動の途上での日射の有無等により,テザー温度が300K程度の幅の大きな変化を示すことや,全長が10万kmに達する長大なものであることなどから,熱による伸縮量は単純に無視できない大きさとなる.筆者らは,これまでほとんど考慮されなかったテザー材料の熱膨張を,宇宙エレベーターの力学モデルに新たに導入し,地球自転と同期した周回運動途上での温度変化によるテザーの熱伸縮運動について調べてきた.テザーの温度変化の影響は音波(熱弾性波)として伝搬し,テザーの軸方向および直交方向に複数のモードの振動を励起することがわかった.本報告では,基礎的な数値計算の結果の概要について紹介する.