日本航空宇宙学会誌
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特集 航空宇宙技術遺産第二号 第3回
日本の固体ロケット技術の礎を築いたペンシルロケット
杉村 文隆
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2025 年 73 巻 4 号 p. 113-116

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抄録

ペンシルロケットは,太平洋戦争後7年間の航空禁止令を経験した日本が人工衛星打上げを行えるようになった,固体ロケット技術開発の礎である.1952年から,東京大学生産技術研究所 糸川英夫教授の指導の下で固体ロケット開発が進められた.その最初の実験用ロケットとして,長さ230 mm,直径18 mmのペンシルロケットが製造され,1955年4月には,現在の国分寺市にて水平発射によるロケットの飛翔に関する各種データを取得する実験が行われた.その後,実験は現在の千葉市にあった東京大学生産技術研究所に場所を移して継続され,そこでは2段式や大型のペンシルロケットも用いられた.同年8月には,秋田県道川海岸での斜め発射実験にて,到達高度600 m,水平距離700 m,飛翔時間16.8 秒の飛翔を実現し,次の大型化されるロケットへと開発を引き継いだ.超小型の固体ロケット開発から開始して人工衛星打上げを達成したという日本独自のロケット開発プロセスにおいて,ペンシルロケットはその出発点となるものである.

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