日本航空宇宙学会誌
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73 巻, 4 号
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連載 航空宇宙関連学校の紹介 第12回
特集 宇宙開発における数値流体力学 第2回
  • 金崎 雅博, 藤田 昂志, 永井 大樹, 大山 聖
    2025 年73 巻4 号 p. 99-105
    発行日: 2025/04/05
    公開日: 2025/04/05
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,火星飛行探査のための機体設計に関する研究開発の一環として行われた,第2回高高度大気球試験(MABE-2)飛行試験機の開発・飛行試験の分析における数値流体力学(Computational Fluid Dynamics: CFD)について述べる.MABE-2の試験機は,火星の低大気密度環境での飛行が可能になるように概念検討がなされ,空力面では揚力獲得や安定性の確保が求められた.MABE-2では,風洞実験だけでは困難な低密度環境下での空力性能を評価し,データベースを作成するためにCFDを活用して,迎角や偏角,Reynolds数,舵効きの影響を検討した.CFDと風洞実験結果の比較により,両者の良好な一致が確認された.また,機体に搭載された微小なアンテナの露出やアライメントについても検討し,空力モデルの作成に用いた.MABE-2は,2023年7月に実施され,その飛行条件から空力モデルとCFD結果との比較を行い,空力特性に関する知見が得られた.MABE-2において,空力データベース構築におけるCFDの活用は,実環境を模擬することが難しい今後の惑星航空探査機開発をはじめ,航空機・宇宙設計の効率化への貢献を示した.

特集 プラネタリーディフェンス:天体の地球衝突問題に対処する 第6回
  • 平林 正稔
    2025 年73 巻4 号 p. 106-112
    発行日: 2025/04/05
    公開日: 2025/04/05
    ジャーナル 認証あり

    NASAの支援のもとでジョンスホプキンス大学応用物理研究所(Johns Hopkins University/Applied Physics Laboratory-JHU/APL)が主導して開発したDouble Asteroid Redirect Test(DART)は,人類初のフルスケールのキネティックディフレクション(探査機衝突による小惑星の進路修正)を行うよう設計されたプラネタリーディフェンスミッションである.このミッションでは,探査機を対象天体である連星小惑星Didymosの副天体Dimorphosに衝突させて,この副天体の主天体に対する相対軌道の変化を測ることで,運動量移送を定量化する.世界標準時間2021年11月24日6時21分,探査機はスペースXのファルコン9ロケットを利用して打ち上げられた.そして,世界標準時間2022年9月26日23時14分にDimorphosに衝突した.この衝突によって,DimorphosのDidymosの相対軌道周期が約33分短縮された.対象天体の平均密度が2.4 g/cm3である場合,ベータ値(プラネタリーディフェンスの定量パラメータ)が3.61であるということが決定された.また,LICIACubeや地球望遠鏡を用いた観測によって,衝突によって飛び出したイジェクタの時間進化を垣間見ることができた.本解説では,DARTミッションの衝突前後の試みを簡易的に紹介する.

特集 航空宇宙技術遺産第二号 第3回
  • 杉村 文隆
    2025 年73 巻4 号 p. 113-116
    発行日: 2025/04/05
    公開日: 2025/04/05
    ジャーナル 認証あり

    ペンシルロケットは,太平洋戦争後7年間の航空禁止令を経験した日本が人工衛星打上げを行えるようになった,固体ロケット技術開発の礎である.1952年から,東京大学生産技術研究所 糸川英夫教授の指導の下で固体ロケット開発が進められた.その最初の実験用ロケットとして,長さ230 mm,直径18 mmのペンシルロケットが製造され,1955年4月には,現在の国分寺市にて水平発射によるロケットの飛翔に関する各種データを取得する実験が行われた.その後,実験は現在の千葉市にあった東京大学生産技術研究所に場所を移して継続され,そこでは2段式や大型のペンシルロケットも用いられた.同年8月には,秋田県道川海岸での斜め発射実験にて,到達高度600 m,水平距離700 m,飛翔時間16.8 秒の飛翔を実現し,次の大型化されるロケットへと開発を引き継いだ.超小型の固体ロケット開発から開始して人工衛星打上げを達成したという日本独自のロケット開発プロセスにおいて,ペンシルロケットはその出発点となるものである.

特集 技術試験衛星9号機(ETS-9)の開発 第6回
  • 草島 達也, 内野 隆暁, 林 謙吾, 矢部 高宏, 宮北 健, 深津 敦
    2025 年73 巻4 号 p. 117-123
    発行日: 2025/04/05
    公開日: 2025/04/05
    ジャーナル 認証あり

    技術試験衛星9号機(Engineering Test Satellite-9: ETS-9)では,通信衛星市場から要求される通信コスト低減及び通信ペイロードのフレキシビリティへ対応するために,フルデジタル通信ペイロードとそのペイロードを搭載可能とする衛星バスの開発を行う計画である.これらのバス及び通信ペイロードは従来衛星に比べて発熱量が増大するため,バス及び通信ペイロードの変更に対応した熱制御技術の開発が必要となっている.バスに関しては,発熱量増大に対応するために,従来熱制御技術の改良として,ヒートパイプ,展開ラジエータ及びヒートパイプ連結を開発することにした.通信ペイロードに関しては,発熱量増大に加えて,機器搭載位置が放熱面から非放熱面へと変更されるため,従来熱制御技術では対応困難であり,新規熱制御技術として,アクティブ熱制御システム(Active Thermal Control System: ATCS)を開発することとした.本稿では,詳細設計結果を元に熱制御系の開発内容について述べる.

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