北関東医学
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原著
脊髄小脳変性症
- ミクログリア動態に対する運動効果の検討 -
須藤 奈々中村 和裕平井 宏和
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2013 年 63 巻 3 号 p. 209-215

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抄録

【目 的】 アルツハイマー病では, 運動が脳内ミクログリアの異常増殖を減少させ, 神経変性を抑制することが報告されている. 本研究では, アルツハイマー病と同様に神経変性疾患である脊髄小脳変性症のモデルマウスの小脳において, 運動がミクログリアの動態へ及ぼす効果を調べることを目的とした. 【対象と方法】 最初に通常飼育の野生型マウス, 脊髄小脳変性症モデルマウス (I型 (SCA1), III型 (SCA3)), ヘテロおよびホモ接合性のStaggererマウス (+/sg, sg/sg) の中でミクログリアの増殖が顕著である系統のマウスを選んだ. 選んだマウスを使用し, コントロール群は通常飼育のみ行い, 運動群にはローターロッドテストを用いた運動負荷を与えた. 両群マウスの小脳切片に対して, ミクログリアのマーカーである抗Iba1抗体と, 活性化ミクログリアのうち神経毒性ミクログリアの指標として使用される抗CD68抗体を使った蛍光免疫組織染色を行い, それぞれのマーカー陽性細胞数を定量化した. 【結 果】 通常飼育環境下では, 神経変性の強いSCA3マウスとsg/sgマウスで顕著なミクログリアの増殖が確認できた. 運動によりミクログリアの総数がSCA3マウスでは減少し, sg/sgマウスでは増加した. 神経毒性のあるCD68陽性ミクログリアはSCA3マウスでは検出されず, sg/sgマウスでは増加した. 【結 語】 脊髄小脳変性症モデルマウスにおいて, 運動によってミクログリアの数は大きく変動し, その変動の仕方は, 疾患モデルマウスの種類によって異なることがわかった. sg/sgマウスは日常の活動量が少ないにも関わらず, 強制的に運動負荷を与えたため, 神経毒性ミクログリアが増加したのではないかと推察される. したがって, ヒトにおいても運動が常によい効果を及ぼさない可能性もあり, 運動療法を行うかどうかはさまざまな情報を統合して慎重に判断する必要があると考えられた.

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