抄録
症例は77歳, 女性. 当科受診の45年前から左大腿腫瘤を自覚し, 23年前に血管腫の診断で30 Gyの放射線治療を施行されている. 今回, 体幹と四肢に広範な皮下出血斑を認め当科入院となった. 検査データでHb 5.7 g/dlと高度の貧血と著明な凝固系検査異常 (Fib 25 mg/dl, PT 10%, APTT 67.9秒, FDP 181.1 μg/ml, TAT 326.8 ng/ml, PIC 11.0 μg/ml), 腎機能障害 (Cr 3.82 mg/dl) を認めた. 左大腿血管腫によるKasabach-Merritt症候群 (KMS), 線溶亢進型の播種性血管内凝固 (DIC) と診断し, リコンビナントトロンボモジュリン (rTM) とトラネキサム酸の投与及び新鮮凍結血漿 (FFP) 補充療法を施行した. 治療開始後, 凝固障害は速やかに改善し, 出血症状も消失した. その後, 左大腿血管腫に30 Gyの放射線照射を施行し, 以後トラネキサム酸内服のみで経過を見ているが, 1年以上に渡り凝固障害の再燃なく, 良好な経過を辿っている. 線溶亢進型DICの急性期治療としてrTMが安全かつ有用であったので報告する.