擤鼻 (こうび, 鼻かみ) 後に生じた稀な外リンパ瘻の2症例を経験した. 外リンパ瘻とは, 急激な中耳圧の上昇によってアブミ骨が外れ, 外リンパが中耳に漏出する病態である. 変動する難聴が主訴の1症例はCoclin-tomoprotein (CTP) 検査が陽性で, 手術前に診断が確定し, 早期の鼓室形成術によって聴力は回復した. 激しいめまいと難聴の症例は, 内耳に空気塞栓を認め, 大量の外リンパ漏出による内耳障害は高度で, 鼓室形成術を施行するも診断の遅れのために聴力は回復しなかった. 術中のCTP検査は陰性で, すでに外リンパは枯渇するほど漏出したと推察した. CTP検査は外リンパ瘻の診断に有用だが, 検査のタイミングによって, 結果を解釈する必要があった. 外リンパ瘻は早期に診断して手術すれば回復する疾患なので, 迅速診断法の確立と, 疾患概念の医療関係者への周知が望まれる.