2022 年 72 巻 2 号 p. 207-212
症例は72歳の男性.食思不振,腹痛,体重減少を主訴に受診した.理学的所見にて,左上腹部に手拳大の無痛性腫瘤を触知した.血液検査にて腎機能障害と軽度の肝機能障害を認め,腹部CTにて胃体部大彎側に壁外発育する長径20 cm程度の内部均一な腫瘤性病変と同様の吸収値を呈する軟部陰影を多数認めた.また肝S6に径30 mm大の低吸収腫瘤も認めた.上部消化管内視鏡では胃体中部大彎後壁寄りにUL Ⅲ以深の潰瘍性病変を認めた.生検の結果,免疫染色にてc-kit陽性,CD34弱陽性であったことから,胃原発GISTと診断した.腹膜播種,肝転移を認めたことから手術適応外と判断したが,入院10日目に腫瘍自壊による胃穿孔を発症したため,緊急手術にて主腫瘍を含めた胃部分切除を行った.術後imatinibの投与を行い,術後6ヵ月後のCTにて播種,肝転移はほぼ消失し,術後12ヵ月後においても病勢のコントロールが維持されている.