北関東医学
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症例報告
慢性尿閉が誘因と思われた自然腎盂外尿溢流の1例
黒川 公平萩原 俊昭東郷 望伊藤 潤
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2025 年 75 巻 2 号 p. 163-167

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抄録

 自然腎盂外尿溢流は,急激な腎盂内圧上昇により腎杯円蓋部の粘膜に顕微鏡的破裂が起こり後腹膜腔に尿が溢流する減圧機構とされており,一時的な急激な腎盂内圧上昇によるものが多いとされている.今回我々は,慢性尿閉が誘因となったと思われる,長期臥床中の高齢女性に発症した自然腎盂外尿溢流を経験したので報告する.患者は71歳,アルツハイマー型認知症にて,在宅医療を受けていた.数日前より,経口摂取不良にて点滴治療を受けていたが,発熱・嘔吐を併発した.腸閉塞疑いにて当院救急搬送.単純CTにて,左右後腹膜腔に中等度の尿貯留あり.骨盤内に高度拡張した膀胱を認めた.腎盂腎炎,後腹膜腔尿溢流および尿閉の診断で入院となった.尿道カテーテル挿入で,約1,200 mLの尿排出を認めた.その後,泌尿器科へコンサルトされた.後腹膜腔への尿溢流は,尿道カテーテル挿入による腎盂内圧の減圧で軽快したと推定されたため,経過観察を提言した.2週後の単純CTで溢流の消失を確認した.低活動膀胱による慢性的な尿閉が示唆され,ウラピジル投与の上,尿道カテーテル抜去を試みたが自排尿は得られなかった.家族の希望もあり,尿道カテーテル留置のまま自宅退院となった.3か月後の経過観察単純CTで,溢流の再発は見られておらず,溢流は治癒したと思われた.

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