2025 年 75 巻 3 号 p. 295-298
疼痛コントロール中に幻視や幻聴があり,当初は発症由来が不明であったが,緩和ケアチームによるサポート開始後,解離症状であることが明らかになった症例を経験したので報告する.症例は60代,男性.X年Y月膵頭部癌と診断され化学療法導入が開始,当科ペインクリニック外来にて疼痛コントロールを行ったが,X年Y+5月より「人影が見える」「指令が聞こえる」といった幻視や幻聴の症状を認めた.現実と区別して考えていること,生活上支障をきたしていないことから精神科医からの助言を受けて経過観察とした.Y+11月入院後より緩和ケアチームのサポートを開始,チームの精神科医師によりせん妄などの意識障害や統合失調症などの可能性は否定され,それまでの職歴に伴う自尊感情の高さや弱音を吐けない矜持による心理的解離症状と判断された.こうした背景に配慮したケア的対応によって疼痛コントロールの改善が得られ,さらに幻覚・幻聴は消失した.