抄録
X線CT法はX線の物質による吸収を利用して、物体の内部構造を非破壊で得る方法である。また、連続的なCT像の積み重ねにより、3次元構造が得られる。放射光は指向性の強い平行光であり、また容易に単色化することができる。これを利用することにより、高空間分解能で3次元CT像が得られるとともに、CT値(物質による線吸収係数(LAC)に対応するCT像の輝度)を定量的に扱える。我々の研究グループは、西播磨にある第三世代大型放射光施設であるSPring-8において開発された放射光を用いたマイクロトモグラフ装置(SPμ CT)[1]を、微隕石に応用している。微隕石は、地球に落下する地球外物質のうちでサイズ1mm以下のものをいい、隕石とは異なった特徴と起源をもつものが存在する。
南極の氷床中から取り出した12個の微隕石試料(100-300μm)を、SPring-8のBL20XUにおいて撮影し、その体積と空隙率を求めた。得られた3次元CT像の画素サイズは0.5x0.5x0.5μmであり、実質的な空間分解能は約1.5μmである。このうちの9個の試料についてはマイクロ天秤(精度:0.1μg)により質量を求め(0.8-5.7μg)、空隙を含むみかけの密度および真の密度を従来よりも高精度で得ることができた(1.7-3.3g/cm3)[2]。含水珪酸塩鉱物を含む2個の非溶融微隕石についての真の密度は1.9±0.2および2.0±0.0g/cm3であり、空間分解能以下のサブμmの空隙の存在が強く示唆される。一方、FeのK吸収端を利用した差分法による、Feの3次元分布像を得ることにも初めて成功し、Fe-richなリムの3次元分布とその成因が議論できるようになった[3]。また、3次元CT像からは、ラピッドプロトタイピング法を用いて、正確な3次元拡大模型(石膏製)を作ることができる。これにより、複雑な外形を容易に理解し、3次元外形の解析が容易になった。
上記のCT装置(SPμ CT)では、試料を透過したX線を蛍光板で可視光に変換し、これを光学レンズで拡大してCCDカメラで撮影するという方法で、CT像の空間分解能を上げているが、可視光の波長(0.4-0.7μm)が限度である。一方、フレネルゾーンプレートを用いてX線を拡大することにより、より高空間分解能のCT像が得られる。SPring-8において開発中のこの結像型CT装置[4]では、現在のところ数100 nmの分解能が確認されており、将来的には100-10 nmの分解能が可能である。惑星間塵やStrardusにより2006年サンプルリターン予定の彗星塵などへの応用の将来性についても議論する。
[1] Uesugi K. et al. (2001) Nucl. Instr. Methods Phys. Res., A, 467-468, 853-856. [2] Okazawa T. et al. (2002) Antarctic Meteorites, XXVII, 137-139. [3] Tsuchiyama A. et al. (2001) Meteoritics & Planet. Sci., 36, A210. [4] Takeuchi A. et al. (2002) Rev. Sci. Instr., 73, 4246-4249.