抄録
地球表面で回収される塵のほとんどは含水隕石に似ている。しかし,含水隕石は,落下隕石中わずか2.8 %を占めるにすぎない。このような塵と隕石における含水物質の存在度の大きな違いは,これまで地球大気の「フィルター」効果によると考えられてきた。 今回,2つの多孔質な隕石の衝撃回収実験を行った。両隕石のうち一方は含水であり,他方は無水である。実験の結果,含水隕石は,無水隕石よりもはるかに広い範囲の圧力で,衝撃を受けた部分が微細な粒子に粉砕され,さらに圧力の解放時に爆発的な膨張を起すことがわかった。この結果は,含水小惑星が無水小惑星よりも,衝突によって塵を形成する割合がはるかに高いことを示しており,塵と隕石における含水物質の存在度の大きな違いをうまく説明する。すなわち,塵と隕石における含水物質の存在度は,それらが地球大気に突入する以前にすでに確立されている可能性が高いことを示している。