日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k01-16
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SDアンビルを用いた(Mg,Fe)SiO3Ilmenite及びPerovskiteの電気伝導度と発生圧力の同時測定
*余越 祥桂 智男伊藤 英司奥部 真樹川辺 和幸野沢 暁史舟越 賢一
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抄録

地球の下部マントルの電気伝導度はMT法等の手法により求められており、下部マントル上部で1S/m、下部マントル底部で10S/mであるとされている。地球の下部マントルは主に珪酸塩ペロヴスカイトで構成されると考えられるので、下部マントルの電気伝導度を説明するため、下部マントルの温度圧力条件でケイ酸塩ペロフスカイトの電気伝導度を測定することが重要である。これまでの高温高圧下での電気伝導度測定には、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用した測定と、マルチアンビル高圧発生装置で超硬アンビルを使用した測定がある。しかし、DACでは安定的に均一な温度圧力条件を発生させることは困難であるためDACで測定された電気伝導度の信頼性は低い。安定し均一な温度圧力条件を発生させることが出来るマルチアンビル装置では、Xu et al.(1998)により25GPa1400_-_1600度という温度圧力条件で測定がなされている。しかし、彼らの測定では超硬アンビルを用いているため、圧力条件が25GPa以下に限られており、珪酸塩ペロフスカイトの電気伝導度の圧力依存性は明らかになっていない。本研究では、焼結ダイヤモンド(SD)アンビルを用いた高温高圧実験の手法と、高温高圧下での電気伝導度測定実験の手法を組み合わせて、下部マントル中部までの圧力領域で電気伝導度測定を可能にする手法を開発し、鉱物の電気伝導度の圧力依存性の決定を可能にした。SDアンビルでは、高温を発生させることが必ずしも容易でないので、ペロフスカイトに対して測定を行う前に、まず低温相である(Mg0.93Fe0.07)SiO3イルメナイトに対して測定を行った。圧力条件は20、25、30GPa、温度条件は300_-_1200Kである。その結果、活性化エネルギー0.69+-0.04 eV、活性化体積-0.91+-0.10cm3/molという値が得られ、イルメナイトの電気伝導度は大きな圧力依存性を持つことが明らかとなった。次に、(Mg0.93Fe0.07)SiO3ペロヴスカイトに対して25GPaと30GPa、300K_-_1400Kで測定を行い、その結果、活性化エネルギー0.39+-0.04eV、活性化体積-0.06+-0.04cm3/molという値が得られた。即ち、ペロフスカイトの電気伝導度の圧力依存性は、イルメナイトとは異なり非常に小さいことが明らかとなった。その後、より圧力決定精度の高い放射光実験を行い、電気伝導度測定と圧力測定を同時に行った。この放射光実験の結果と、放射光を用いない通常の実験を併せて活性化エネルギーと活性化体積の計算を行い報告する。また、これらの実験結果をもとに、下部マントルの電気伝導度モデルを計算し地球電磁気学的観測から求められた下部マントルの電気伝導度と比較を行う。

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© 2004 日本鉱物科学会
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