日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k02-01
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高分解能蛍光X線分光法を用いた浅間火山岩中のFeの化学状態分析
*奥井 眞人福島 整Aurel Mihai Vlaicu安井 真也山下 満元山 宗之
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抄録

非破壊でFeの化学状態を分析することを望むならば、これまでメスバウアー分光法は唯一の実用的な方法であると考えられてきた。しかしながら、この方法は極めて高感度というわけではなく、そして放射性同位体元素を使用するため利用できる場所が限られる問題があった。これに対して、蛍光X線分光法(XRF)は、よく知られている定性的かつ定量的な分析に幅広く利用されている方法であり、高分解能で測定された固有X線のスペクトル特性がその元素の化学状態に比例して変化することが既に報告されている。この現象を利用してあらゆる元素の化学状態は決定可能であると考えられる。本報告では、浅間火山の溶岩試料を例にFeの化学状態分析のためにこの高分解能蛍光X線分光法(HRXRF)を応用した結果を示す。HRXRFスペクトルは、二結晶型分光器(RIGAKU 3580E3)を用いて測定された。Feの化学状態の分配のための標準試料として、Fe(III)に対してはFe2O3、及び、Fe(II)に対してはFeTiO3を用いた。上記の2標準試料のFeKα1スペクトルの比較から、FeTiO3 ( Fe(II) )のピーク位置はFe2O3 ( Fe(III) )の位置よりも0.10eV高かった。一方、試料として用いた鬼押出溶岩から得られた溶岩試料のFeKα1スペクトルは、これらの標準試料により得られた位置の間のFe2O3より0.07eV高い位置に現れ、そしてそのピーク幅はFe2O3のものより広かった。ここで、Fe(II)とFe(III)の測定された標準スペクトルを端成分に、非線形最小二乗法に基づいたピーク分離法をこの溶岩試料の測定スペクトルに適応したところ、充分な精度をもってFe(II):Fe(III)は64:36の結果に収束した。同様の手法で分析した浅間B’降下火砕物の2試料についても,Fe(III)の量がFe(II)より多く存在したということが見出された。

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© 2004 日本鉱物科学会
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