抄録
マントルで重要なマグネシウムケイ酸塩と同様に、いくつかのゲルマニウム酸塩は高温高圧下でイルメナイト−ペロブスカイト転移を起こすことが知られている。しかし、従来それらの相関係は詳しく研究されてこなかった。今回MgGeO3、ZnGeO3、MnGeO3の高温高圧下の相平衡関係を明らかにした。 高圧実験には、川井式6-8型マルチアンビル装置を使用した。出発物質には、輝石型MgGeO3、イルメナイト型ZnGeO3、ZnO+GeO2、イルメナイト型MnGeO3を合成して用いた。これらの出発物質をレニウムカプセルに入れ、14-27GPa、1200-1800Cに1時間保持し、急冷試料を微小部X線回折装置で調べた。また高圧相(後述のニオブ酸リチウム型相)を出発物質として逆反応実験を行った。 MgGeO3では、1600C、23GPaでイルメナイト相が高圧相に転移し、その急冷生成物はニオブ酸リチウム(LiNbO3)型の相であった。すでにLeinenweber et al. (1994)がその場観察X線回折法で示したように、この相は高圧下では斜方晶ペロブスカイト構造であるが、減圧過程でLiNbO3型に転移する。そのため、LiNbO3型相が合成された圧力温度条件では、ペロブスカイト相が安定であるとした。MgGeO3のイルメナイト−ペロブスカイト転移の相境界線は、P(GPa)=36.2_-_0.008T(C)と決められた。1600CでのMgGeO3のイルメナイト−ペロブスカイト転移圧力はほぼMgSiO3の転移圧力と同じであるが、相境界線の勾配はより大きな負の値になっている。 ZnGeO3とMnGeO3では、1200Cでそれぞれ23、16GPaでイルメナイト型が高圧相に転移し、この高圧相を常圧に回収したものはLiNbO3型であった。この結果から、MgGeO3と同様に、高圧相がペロブスカイト型であると解釈された。ZnGeO3のイルメナイト−ペロブスカイト転移の相境界線は、P(GPa)=26.4_-_0.003T(C)であった。MgGeO3とZnGeO3の相境界線がいずれも負の勾配を持つことは、ペロブスカイト相がイルメナイト相よりも高いエントロピーを持つことを示している。このことは、比較的小さなMg2+、Zn2+イオンがペロブスカイト構造の大きな8_から_12配位サイトに入ることによって生ずる格子振動エントロピーの増大によって説明できる。今回イルメナイト−ペロブスカイト転移の圧力を決定した三つのゲルマニウム酸塩の中で、MnGeO3の転移圧力が最も低いことは、最も大きいMn2+イオンがペロブスカイト構造に一番適合することを反映していると考えられる。