日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k03-23
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ペンタゴン石とカバンシ石におけるバナジウムの配位多面体と価数の関係
*石田 直哉木股 三善興野 純八田 珠郎
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抄録

[はじめに] ペンタゴン石とカバンシ石は、いずれもCa(VO)(Si4O10)・4H2Oの組成で、多形の関係をもつ層状珪酸塩鉱物である(Staples et al., 1973)。Evans (1973)は、ペンタゴン石とカバンシ石のバナジウムの価数は、計算によって四価と五価の混在とし、両鉱物ともその配位多面体はVO5正四角錐を形成するとした。しかし、両鉱物のバナジウムの配位環境を正確に調べるには、過去の研究ではR因子が高く(ペンタゴン石は、R=8.1%で、カバンシ石はR=10.9%)、微量元素・水分子を含めた正確な化学組成は決定されていないという問題点が挙げられる。また、酸化バナジウムにおいてバナジウムの価数と配位多面体の関係が明らかにされている。それは、V5+はVO4四面体を形成し、V5+とV4+の混在はVO5正四角錐を形成し、V3+が多くなるにつれVO6八面体を形成する(Peter and Stanley, 1999)ということである。そこで、本研究ではペンタゴン石とカバンシ石に対し、正確な化学組成の決定とバナジウムの価数の測定、結晶構造の精密化を行い、これらの鉱物におけるバナジウムの配位多面体と価数の関係を明らかにすることを目的とし実験を行った。[実験方法] 本研究で用いる試料は、インドWagholi産のカバンシ石とペンタゴン石で、ペンタゴン石はモルデン沸石と共生し、板状自形結晶の集合体を示す。カバンシ石は輝沸石と束沸石と共生した板状自形結晶の放射状集合体を示す。 化学組成は、EPMAを用いて測定し、水分子は示差熱重量分析を用いて測定した。結晶構造の精密化は、単結晶X線構造解析装置を用いて行った。バナジウムの価数は、X線光電子分光分析(XPS)装置SCIENTA ESCA-300を用いて測定した。[結果] EPMAと示差熱重量分析の結果から、カバンシ石・ペンタゴン石ともにほぼ理想化学式の組成を示したが、カバンシ石はAlを微量に含み(約0.3 wt.%)、一方ペンタゴン石はMnを微量に含む(約0.5 wt.%)。また、ペンタゴン石では、Si席にバナジウムが微量に置換した組成を示した。 単結晶X線構造解析の結果、結晶構造の精密化はR因子として、ペンタゴン石は4.3%、カバンシ石は5.9%に収束した。バナジウムの配位環境は、ペンタゴン石では五配位のVO5正四角錐を形成し、カバンシ石では六配位の歪んだVO6八面体を形成することが判明した。 XPSの結果、ペンタゴン石のV2p3/2スペクトルは、V4+のピーク位置にピークを示し、V5+のピーク位置に肩を持つスペクトルを示す。カバンシ石のV2p3/2のスペクトルは、V4+のピーク位置にピークを示し、V3+のピーク位置に肩を持った相対的に低エネルギー側にシフトしたスペクトルを示す。[考察] XPSの結果から、ペンタゴン石は四価と五価のバナジウムを含み、カバンシ石は三価と四価のバナジウムを含むと考えられる。ペンタゴン石において、Si席にバナジウムが置換した組成を示すことと、カバンシ石においてバナジウムが歪んだ八面体を形成することは、V5+がVO4四面体を形成することと、V3+を含むことによりVO6八面体を形成すること(Peter and Stanley, 1999)に起因すると考えられる。

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© 2004 日本鉱物科学会
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