日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k01-08
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エジリンの高温高圧相関係
*岡田 卓山中 高光峰 哲郎永井 隆哉鍵 裕之
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抄録

1. はじめに地球下部マントルにおいて、アルカリ元素(特にNa, K)はどのような形態で存在しているのだろうか。最近MORB組成において、NaやKに卓越した相(カルシウムフェライト構造相、CAS相、NAL相など)の存在が報告されている。一方で大量に存在するペロブスカイト中の微量成分として存在するとの提案もある。本研究では、下部マントルでより酸化的な条件におけるNaを含むペロブスカイト端成分の存在を期待して、エジリン(NaFe 3+ Si 2 O6)の高温高圧相関係を、DAC・レーザー加熱・放射光を組み合わせて調べた。2. 実験出発物質は、Na2CO3, FeO(OH), SiO2試薬をモル比で1:2:4に混合した試料を800℃で12時間焼成した後、粉砕し再度焼成という作業を数回繰り返して合成した。粉末X線回折及びEDS化学組成分析によりエジリンであることを確認した。この粉末試料をレバー式DACに封入した。ガスケットは肉厚250mmのRe箔を50mmまで予め仮押ししたものを用い、試料の上下には断熱材としてアルミナ粉末を置いた。この試料を目的の圧力(現在のところ31GPa及び52GPa)まで加圧し、KEK-PF BL13A設置のNd-YAGレーザーを用いて加熱し1300~1500Kにおいてアニーリングした。各圧力及び加熱前後に、室温において放射光X線回折測定を行った。発生圧力は室温においてルビー蛍光法により決定した。3. 結果と考察31GPa及び52GPaでは加熱アニーリング後、エジリンがスティショバイトとヘマタイトに分解していることが観測された。Naを含む結晶相は観測されなかった。未反応のエジリンは残っていた。本実験結果より、エジリン組成の単一相(例えばペロブスカイト相)としては少なくとも52GPaまで存在しないことが明らかになった。下部マントルにおけるNaは、大量に存在するペロブスカイト中の固溶成分としてではなく、卓越相として微量体積存在する可能性が高い。

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© 2004 日本鉱物科学会
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