日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k01-09
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MgAl2O4の高温高圧相関係
*末田 有一郎入舩 徹男井上 徹肥後 祐司國本 健広名村 弘基舟越 賢一
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抄録

はじめに MgAl2O4スピネルは、低圧のカンラン岩質捕獲岩の一般的な組成であり、上部マントル浅部においてAlや他の3価の陽イオンにとって重要な寄宿先になっている。また、Alは下部マントルにおいて主にペロブスカイト相に含まれると考えられているが、MgAl2O4スピネルの高圧相もAlのホストとして、特に沈み込む玄武岩地殻において重要であり、その高圧相関係を明らかにすることはマントルの化学組成を明らかにする上で重要であるといえる。本研究では25_から_45GPa、2500 Kまでの温度圧力条件下において、放射光X線その場観察によりMgAl2O4の相関係について調べた。実験方法 出発物質には多結晶のMgAl2O4を用い、これに圧力マーカーの金粉を10:1 (wt%)の割合で混合し、Anderson et al. (1989)による金の状態方程式から圧力値を見積もった。実験はSPring-8のBL04B1に設置されている川井型装置 (SPEED-mkII)を用いて放射光X線その場観察実験を行った。また、回収された試料に対して微小部X線回折装置および顕微ラマンスペクトルによる測定を行った。実験結果 約36 GPaまで加圧後、荷重を一定に保ったまま加熱を行い、spinelからの相転移を観察した。その結果、1800 K、32.5 GPaにおいてspinelはCaFe2O4構造へ相転移することが観察された。クエンチした後、再び加圧を行い、1800 Kまでの相関係について調べたところ、44.2 GPaまでCaFe2O4構造が安定して存在することが明らかにされた。また、次に1800 K以上の温度条件下での相関係について調べたところ、_から_30 GPaで行った実験では2500 KまでCaFe2O4構造が観察されたのに対し、_から_40 GPaで行った実験では2070 K、41.9 GPaの温度圧力条件下でCaFe2O4構造のX線回折パターンが変化する様子が観察された。その後、温度を2000 Kまで下げると再びCaFe2O4構造が観察され、再度温度を上昇させると2100 Kにおいて同じく未知相が観察された。今回行った温度圧力領域ではFunamori et al. (1998)においてLHDACを用いて研究がなされており、CaFe2O4およびCaTi2O4構造の存在が報告されている。しかし、今回観察された未知相のX線回折パターンはこれら二つの構造とは異なっていた。この未知相は常温常圧下へ回収することが可能で、回収試料に対する微小部X線回折装置および顕微ラマンスペクトルの解析でも同じくCaFe2O4およびCaTi2O4構造以外の高圧相であることが示された。

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© 2004 日本鉱物科学会
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