日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k06-06
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もみ殻を構成するシリカの加熱変化
山本 由華*奥野 正幸小矢野 幹夫片山 信一
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抄録

はじめに もみ殻を燃焼させても、他の植物等と比べてあまり体積が変化しないことが知られている。これは、もみ殻に多く含まれているシリカの影響と考えられる。そこで本研究では、主としてラマン分光測定により、加熱によるもみ殻の非晶質、並びに結晶質物質の構造変化を明らかにすることを目的とした。試薬・実験 もみ殻は富山県産こしひかりのものを使用した。もみ殻試料は、電気炉中200から1000℃の温度(200℃間隔)で1時間加熱し、室温に冷却した。もみ殻の構成する元素の定性、定量分析は蛍光X線分析装置(ED-XRF)によって行い、SiO2が約90wt%を占めていることが明らかになった。結晶相を同定するために、粉末X線回折測定(リガクRint2200粉末X線回折計)を行った。また、分子構造の解析のため、顕微ラマン測定(励起光源Ar+レーザー、照射直径2ミクロン)、及び赤外分光測定を行った。さらに、原子レベルの平均構造を調べるため、X線回折測定結果を用いて差動径分布関数(DRDF)を計算した。結果・考察 X線回折測定の結果、200-600℃では、ブロードな非晶質特有のパターンを示し、800℃でクリストバライトの鋭いピークが現れ始めた。1000℃ではクリストバライトに加え、トリディマイトのピークも現れ始めた。この結果から、1000℃でさらに加熱時間を長くすることによってクリストバライトからトリディマイトへの相変化が進むと考えられる。ラマン測定では、600℃で430-450cm-1にSiO4の6員環構造を表す幅の広いバンドが観測された。さらに、800℃では、結晶質を表すクリストバライト結晶バンドと、SiO4の6員環構造に加えて、SiO4の4員環構造を表す490cm-1(D1バンド)、SiO4の3員環構造を表す662cm-1(D2バンド)が観測された。このスペクトルはSiO2ガラスのスペクトルに類似していることが明らかになった。1000℃で加熱したものには、結晶質を表すスペクトル(クリストバライト)のみが観測された。赤外スペクトルでは、200℃で見られたH2O、C=O伸縮振動、C-H、O-H伸縮振動、及び有機物に対応するバンドが加熱によって消滅した。他方、Si-O-Si変角振動の吸収が800℃で急激に上昇し、SiO4四面体の重合が進んだと考えられる。以上のことより、もみ殻中に含まれているシリカ(SiO2)は600℃以下では、ほぼアモルファス状態であるが、600℃以上に加熱することで、シリカガラスに似た構造を経て、800℃付近でクリストバライトへと結晶化し始める。さらにトリィディマイトも微量に見られ、1000℃付近では完全に結晶化していることが明らかになった。

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© 2004 日本鉱物科学会
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