抄録
約10年前より、日常生活から発生する廃棄物の最終処分場の天然状態との分離壁素材(シーリングソイル)、汚染土壌の安定処理素材(シーリング工法)の主要天然素材として“粘性土”が使用されている。通常シーリングソイルの名称を付して使用している分離壁はゴムシート、ビニールシート等を使用するが、これらの工法に於いてはシートの機械的破損、紫外線に依る劣化等の問題があるのに対し、天然素材、特に無機質素材を使用する工法ではこの問題が発生しにくい。シーリングソイルには“粘性土”を主要素材とし、さらに天然鉱物ゼオライトおよび炭酸塩鉱物類、ドロマイト、石灰石およびそれらの焼成体の作用を考察して用いる。実際に施行を行い良好な結果を果たしている状態である。此の新工法に置いては“粘性土”を70_から_80_%_、ゼオライト(モルデン沸石、斜プチロル沸石の二種混合物)10_から_15_%_、炭酸塩鉱物とその焼成体10_から_15_%_を混合使用し隔離壁を作り廃棄物より発生、流出する有害成分、主として無機金属、ヒ素類をこの素材に吸着、固定を行い処分場外への流出の防止、更にその壁面の機械強度、透水性の発生を確かめて使用し、良好な結果を得ている状態である。これ以外の工法として、Clay barrier (粘土隔離壁)は国外で常用されている工法であるが、本研究での工法である三種素材、特に天然ゼオライトを使用する工法は国外の研究者にも興味を持たれる工法であって特殊の新工法として注目され始めている.またこの三種鉱物混合体の使用は汚染土壌の処理工法でも良好な結果が得られている。とくに重金属類、ヒ素等に寄る汚染土に含有されている有害成分を此の混合素材を混合し、処理体中に吸着・固定する“シーリングソイル工法”の開発し進展し、既に10件を超える地区に施行がなされている状態である。此の場合に使用される“粘性土”は地表において発生した風化生成の粘土質土壌である。例えば火山性ローム(例としては関東ローム)、花崗岩質の“まさ土”等である。その良質のものは、パーサイト、低結晶質カオリン等の混合が重要である。今回これら二種風化生成土壌の風化作用による生成過程の鉱物学的研究結果に関して報告を行う。