2000 年 1 巻 p. 25-32
われわれ,作業療法士養成校においては臨床実習が課せられている近年,「知識がないから実習にならない.」のではなく,「人とコミュニケーションがうまくとれない.」「消極的である.」など,適性を含めた態度・コミュニケーションのレベルで実習が中止されてしまうケースが増えつつある.学生が臨床実習で実際受ける評価内容の問題点も,技術・知識の領域よりも態度・コミュニケーションの要因の比重が多い.われわれの研究でも学校の成績と臨床実習の成績とは相関がなく,むしろ臨床実習の成績は学生の気分の状態や自我機能の一部と相関が認められている.今回のケースのように学内での成績はとくに問題が見られなくとも実習で態度・コミュニケーションの問題を指摘される.その表現として「作業療法士としての適性がない.」という評価をしばしば受けた.その評価に対して学生自身,臨床実習という場の枠組みに注目し,場への適応とその枠組みについて検討したい.