2022 年 91 巻 p. 36-44
本研究では、教師の読みと相違するかもしれない学習者自身の読み、更には個々の学習者がもつ「複数の」読み(このような読みを生みだす自己の総体を「複数の自己」という)を実際に教室に提出させようとする際に浮かび上がる問題について、寛容という切り口から文学の授業実践の理論と方法を検討した。
小学校第五学年を対象とした実践では、文学作品を読んだ感想を人物Aと人物Bの問答体としての戯文形式で書かせ、同じ作品を読んだ他の学習者と対話する活動を設定した。その結果、戯文の創作は「複数の自己」を可視化し、その戯文を用いて他者と対話をすることで、「複数の自己」それぞれへの価値・意味の気付きがもたらされることが明らかとなった。