2022 年 92 巻 p. 41-49
多くの小学校では、学習者がごんに同化した読み方をしたままで『ごんぎつね』の授業を終えるところに根本的な課題がある。その根本的な課題を追究すると、『ごんぎつね』の語りの構造と最終場面における視点の転換を正しく捉えていないことに原因があることが判明した。
そこで本実践では、冒頭部分の一文に着目する授業を展開し、『ごんぎつね』が伝承物語であること、『ごんぎつね』の語りの構造をわかりやすく視覚化したスライドを提示すること、『ごんぎつね』はごんだけではなく兵十も変容すること、最終場面においてごんと兵十が限定的であっても通じ合って悲劇で終わる物語ではないこと、『ごんぎつね』の特性を生かして、「その後の兵十の物語」の創作活動をするなどを構想して授業を行った。その結果、児童達は対象化して『ごんぎつね』を読めており、本実践によって『ごんぎつね』の授業の課題を解決する有用性を見いだすことができた。
さらに学習者の事例を分析して、学習者が『ごんぎつね』の語りの構造を理解する際に「中山様」と「加助」が鍵を握ることを指摘した。