2005 年 18 巻 p. 106-111
eラーニングには,学習者の関心や能力に応じた学習環境が生成・提供できる点や学習者が自ら学びの順序やペースを制御できる点など,個々の学びの差異を許容するという大きなメリットがある。しかし,eラーニング教材のデザインにおいて拠り所となっている“インストラクショナル・デザイン”は,基本的に“One-size-fits-all",即ち「同じ設計方法の教材を学習者に画一的に配信する」というアプローチの域を出ていない。本研究では,個々人の先天的な情報の捉え方や思考の道筋の多様性を類型化した認知スタイル理論に着目し,各人の認知スタイルがeラーニング教材のデザインや学習効果とどのように関連しているのかを,教育工学的手法に基づき調査・実験した。その結果,各人の認知スタイルに適合すると想定されるデザインを採用したeラーニング教材の学習効果がより高いことが示唆され,今後のeラーニングの個別化に向け,認知スタイル理論の導入が1つの重要な契機になり得るという知見が得られた。