高等学校の力学の分野で学ぶ「運動量」,「運動量の保存」は,ベクトルとしての取り扱いが必要であるため,指導が難しい。実験を交えて講義を進めることができれば,指導の難しさを改善できるが,講義の合間という限られた時間内に,解析に耐える実験を行うことは困難であった。そこで,2つのエアーパックが平面内で分裂する運動を映像化し,これをコンピュータを用いて画像解析して,運動量の保存を検証しながら展開する授業を開発した。シミュレーションではなく実際の運動そのものを提示し,提示した映像から位置データを求めるなど,提示と測定と処理をリンクさせたため,生徒が興味・関心を持って授業に参加するようになった。ベクトルの演算についても,コンピュータの画面上でベクトルを動的に取り扱うことにより,生徒が容易に理解するようになった。また,自作したエアーパックと滑走台を使って,極めて摩擦が少ない状態での分裂運動を映像にしたため,十分な精度で運動量の保存を検証することができる。これにより,運動量の保存を納得とともに理解させることができるようになった。