抄録
スチレングラフト加工絹の熱的挙動及び構造特性を明らかにするため, 示差走査熱量測定 (DSC), X線回折および走査型電子顕微鏡観察を行った。
グラフト率が20%以上の加工絹糸のDSC曲線において, 320℃と430℃付近とに二つの吸熱ピークが現れた。前者は絹フィブロインの熱分解に, 後者は加工絹糸中に充填したスチレンポリマーの熱分解に帰属した熱的挙動であることがわかった。430℃付近で見出される吸熱ピークのエンタルピー変化量は, スチレングラフト加工率の増加につれて増大しており, 430℃付近のエンタルピー変化量の値からグラフト加工率が推定できるものと考察した。グラフト加工の有無に関係なく絹フィブロインの結晶構造変化は見られなかった。グラフト率が20%以上の加工絹糸のX線回折像には絹フィブロインの Silk II型結晶の回折のほかに, 非結晶性スチレンポリマーによる散漫散乱の重複が認められた。