1984 年 53 巻 6 号 p. 489-495
成虫行動と羽化ホルモンとの関係を知るため, 人為羽化脱皮個体を用いて研究を行った。人為羽化脱皮雄蛾は羽化ゲートがくるまで雌フェロモンに対して反応しなかった。この雄蛾の行動は“擬似羽化行動”終了後急激に変化し, 種々の成虫行動がなされた。人為羽化脱皮雌蛾は正常雄蛾と交尾はできるが, 産卵ゲートがくるまで産卵はしなかった。羽化ホルモンは早期成虫行動を引きおこすことができた。羽化しているカイコガ体液中には羽化ホルモン活性が存在し,“擬似羽化行動”をしている人為羽化脱皮個体体液中にも羽化ホルモン活性が存在した。これらのことは羽化ホルモンの体液中の出現と成虫羽化行動とが関連していることを強く示唆した。これらの結果から, 成虫羽化行動は羽化ホルモンが体液中へ放出されることで誘起せられるものと結論した。また成虫神経系は羽化ホルモンにさらされた後のみ, 活発になるものと推察した。