高分子化學
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塩化ビニルの重合に関する研究
第15報 二硫化炭素中における重合
宇野 泰三
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1960 年 17 巻 177 号 p. 64-68

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抄録

二硫化炭素 (CS2) は塩化ビニル (VC) と共重合しない。CS2中におけるVCの重合から重合速度 (Rp) は開始剤濃度 [I] の1/2乗に比例するが, モノマー濃度 [M] との間には一定の関係が得られないことがわかった。また重合度 (P) はCS2の強い連鎖移動作用によって著しく低下する。しかも1/PとCS2/VC (モル比) のプロットは直線関係にならなかった。溶液重合におけるこれらの特異な諸現象は, 重合系を均一系と考えないで, VCとCS2が各々ミクロ的な細粒となって存在するか, もしくはモノマー粒子をCS2が包んでいると考えれば説明されることがわかった。したがって, 変則的な塊重合と推定される。モノマ-粒子の大きさはCS2VC=1程度まで変わらずRp は [M] に無関係であるが, CS2でさらに希釈する場合は小さくなると考えられ, 開始反応が [M] に依存するに至る。生成ポリマーを塊重合ポリマーと赤外線吸収から比較することによって, CS2の連鎖移動を裏付け, 連鎖移動したモノマーラジカルの再開始能について言及した。

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